診療放射線技師を目指す学生や若手技師に少し役立つ情報を提供します。
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腫瘍関連について

医学大要などで腫瘍関連の問題も見かけます。

上手くまとまっていませんが、情報量として扱ってください。腫瘍の概要や原因を中心に書いていきます。

いつものごとく、都度更新していく予定です。ご了承ください。

口腔癌

舌、歯肉、頬粘膜、口底、上顎洞、口蓋が含まれます。

舌癌

口腔癌で最も好発するがんです。

組織型は、扁平上皮癌がほとんどで、腺癌はまれだそうです。

飲酒・喫煙などの化学的な慢性刺激や、歯並びの悪い歯が常に当たる機械的な慢性刺激などが誘因と考えられています。

 

食道癌

扁平上皮癌が90%以上です。

アルコール、喫煙が主な危険因子となります。

リンパ行性に転移しやすく、胸部食道の癌は腹部や頸部のリンパ節に転移しやすいです。

また血行性転移(肺、肝臓、骨など)、播種性転移(腹膜や胸膜など)も見られます。

食道は漿膜に覆われていないため、周囲の臓器に浸潤しやすいそうです。

例えば、次のような感じです。

  • 反回神経(嗄声、誤嚥)
  • 気管、気管支(食道気管支瘻、咳嗽、肺炎)
  • 大動脈、肺(胸部痛、背部痛)
  • 肺静脈、心嚢、横隔膜、肝臓など。

ちなみに肺動脈や上大静脈は食道と直接的に接していないため、浸潤しにくいそうです。

治療法は、Stage分類や全身状態で選択されます。

早期癌では、内視鏡的治療が中心とります。EMR、ESD。

早期癌以外では、外科的治療(食道切除+食道再建+リンパ節郭清)や化学放射線療法が選択されます。

切除不能例では、化学療法、放射線療法、姑息的治療(食道ステント挿入術など)などが選択されます。

 

胃癌(2019/10/25 追記)

腺癌が90%以上です。

  • 分化型腺癌 管状腺癌や乳頭腺癌など腺管形成があるもの
  • 未分化型腺癌 低分化型腺癌や印環細胞癌など腺管形成がほとんどないもの

ピロリ菌感染や食塩の過剰摂取が危険因子となります。

ピロリ菌に感染すると、次のような過程となります。

萎縮性胃炎 → 腸上皮化生 → 胃癌

腸上皮化生とは、胃粘膜上皮が腸粘膜上皮に変化することを言います。分化型癌の発生母地となります。萎縮性胃炎で見られ、幽門側から変化することが多いです。

肝細胞癌

肝細胞癌は、肝動脈からの血流が主体で、門脈血流はほとんどありません。

治療法は、肝障害度、腫瘍数、腫瘍径などを考慮し選択されます。

肝切除、経皮的局所療法、肝動脈化学塞栓療法、肝動注化学療法、肝移植などがあります。

  • 経皮的局所療法
    超音波やCTガイド下で経皮的にアプローチして行う治療です。
    侵襲が少ないため、繰り返し施行できるのが特徴です。
    現在はRFAが治療成績が良好のため、主流となっているそうです。

 

  • RFA(ラジオ波熱凝固療法)
    電極針を腫瘍に到達させ、ラジオ波を照射することで、腫瘍を焼灼壊死させます。
    1回の照射で焼灼できる範囲が広いのが特徴です。

 

  • PMCT(経皮的マイクロ波凝固療法)
    RFA同様に腫瘍に電極針を到達させマイクロ波を照射します。
    あまり普及はしていないそうです。

 

  • PEIT(経皮的エタノール注入療法)
    腫瘍にエタノールを注入し、腫瘍を壊死させる方法です。
    エタノールが均一に広がらないという欠点があり、再発率は高めだそうです。

 

TACE(肝動脈化学塞栓療法)

腫瘍に栄養を送る動脈をゼラチンなどの固形物質でふさぐことで、腫瘍を壊死させる手法です。これをTAE(肝動脈塞栓療法)と言います。

塞栓物質に抗癌剤(ミリプラチン、エピルビシンなど)を加えて行う治療をTACEと言います。腫瘍の大きさや個数を問わず治療ができることが利点です。

禁忌

肝細胞癌は門脈に浸潤しやすく、門脈本幹など大きな門脈枝に腫瘍塞栓をつくることがあります。

門脈が塞栓されると、肝臓の栄養は肝動脈から供給されることになります。

この状態で肝動脈を塞栓すると、正常な肝の栄養も途絶されてしまいます。

そのため門脈塞栓がある場合は、TACEの禁忌となります。

 

大腸癌(結腸、直腸)

S状結腸、直腸に好発します。

大腸癌は、以下の2パターンで発生することが多いようです。

  • 正常粘膜 → 腺腫 → 癌
  • 正常粘膜 → 癌

遺伝的影響や食生活などと関連していると言われてます。

 

腎蔵の腫瘍

腎蔵に発生する主な腫瘍は、成人と小児で異なります。

  • 成人 悪性腫瘍が腎細胞癌、良性腫瘍は腎血管筋脂肪腫
  • 小児 Wilms腫瘍

 

腎細胞癌

近位尿細管に由来する上皮性悪性腫瘍です。組織学的には淡明細胞癌というものが最も多いそうです。

発症早期には無症状であることが多いそうです。

3大特徴として、次のようなものがあります。

  1. 血尿
  2. 側腹部痛
  3. 腹部腫瘤

 

リスクファクターは肥満、高血圧、喫煙、遺伝因子、環境因子(重金属、有機溶媒など)、透析の有無などが挙げられます。

診断には造影CTやMRI、超音波が有用です。

 

腎細胞癌の病理組織では、約70~80%を淡明細胞癌が占める。

この淡明細胞癌は、血流が豊富であるため造影CTの動脈相で不均一に強く造影されます。

排泄相では、正常腎実質よりも低吸収となることが特徴です。

超音波ではカラードプラを用いて血流の有無を精査することで、淡明細胞癌の診断の補助となります。

化学療法や放射線療法には抵抗性であるため、外科的治療が基本となるそうです。

 

腎血管筋脂肪腫(AML:angiomyolipoma)

成熟した脂肪組織、平滑筋、壁の厚い血管で構成された良性腫瘍です。

結節性硬化症ではAMLを合併していることが多く、30歳代の女性に好発します。

結節性硬化症の合併以外では、50歳以上の女性に好発します。

腫瘍が増大すると、痛みや血尿などの症状が見られます。

診断にはCTや超音波が有用であり、腫瘍に脂肪組織の存在有無を確認することが重要です。

※結節性硬化症
母斑病の1つです。
顔面血管線維種、てんかん、精神発達遅滞などが認められます。

 

Wilims腫瘍

後腎原基細胞に由来する腫瘍と考えられています。

小児腎腫瘍の中で、約90%と頻度が高いです。

また全小児の悪性腫瘍の約6%程度を占める腹部悪性腫瘍ですが、予後は比較的良好だそうです。

 

膀胱癌

移行上皮癌が90%以上です。

喫煙、染物工場などでの芳香族アミンへの職業的曝露が発症のリスクとなります。

 

精巣腫瘍

精巣に発生する腫瘍は、胚細胞腫瘍が大半です。

その中で組織学的にセミノーマと非セミノーマに分類されます。

セミノーマは、特に化学療法が効果的であるのが特徴です。

胚細胞腫瘍以外の精巣腫瘍には、悪性リンパ腫があります。

胚細胞腫瘍は20~40歳代に好発します。50歳以上では悪性リンパ腫が多く、その次が胚細胞腫瘍です。

胚細胞腫瘍の症状は、無痛性陰嚢腫大です。

停留精巣がリスクファクターとなり、欧米人に好発するそうです。

 

乳癌(2019/10/25 追加)

乳癌には次のような分類があります。

  • 癌細胞が基底膜外に浸潤しているか否か
    • 癌細胞が基底膜に留まっている 早期癌
    • 癌細胞が基底膜外の血管やリンパ管に浸潤している 全身に微小転移しやすい
  • 発生部位が乳管上皮か小葉上皮か

日本では、浸潤性乳管癌が多いそうです。

乳癌は、血行性・リンパ行性で全身に遠隔転移します。主な転移先は次のようになります。

  • 脳 3%
  • 肺 33%
  • 皮膚・胸壁 19%
  • 肝臓 8%
  • 骨 26%

リンパ行性では、腋窩リンパ節を経由します。乳癌を経由するリンパ液が、最初に到達するリンパ節を、センチネルリンパ節と言います。

このセンチネルリンパ節に転移がなければ、それより先のリンパ節には転移していない可能性が高くなります。

子宮癌

子宮頚癌

女性生殖癌の中では最も頻度が高い癌です。

扁平上皮癌が85%、腺癌が15%を占めます。

ヒトパピローマウイルス感染が原因となります。

多産婦に多く、若年者に多いのが特徴です。進行癌は60歳代以降に多いそうです。

症状は性交時などに、不正性器出血を起こします。

治療法
外科的治療、放射線療法、化学療法が選択されます。

 

子宮体癌

子宮内膜に発生する上皮性悪性腫瘍で、子宮癌全体の30%程度の割合です。

腺癌が95%以上で、50歳代が好発年齢です。

初期の症状は、疼痛がなく閉経後に不正性器出血を起こします。

骨盤内組織に浸潤すると、下腹部痛などの疼痛が出現します。

子宮体癌はエストロゲンに依存するもの(Ⅰ型)と別の原因で発生するもの(Ⅱ型)があります。

治療法
外科的治療が基本となる。

膣癌 2020/6/12 追加

第72回 国家試験 AM50の選択肢にあったので、追記してます。

膣癌は、私の持っている書籍等に記載はなかったので、「国立がん研究センター がん情報サービス」を参考にしました。勝手にリンクを貼らせて頂きます。

組織型としては、主に次の2つだそうです。

  • 扁平上皮癌 膣癌の80~90%は扁平上皮癌だそうです。主な危険因子として、高年齢(60歳以上)、ヒトパピローマウイルス(HPV)への感染が知られています。
  • 腺癌 腟の表面にある腺細胞から発生します。膣癌の5~10%が腺癌だそうです。扁平上皮癌と比べて、肺やリンパ節への転移の可能性が高くなつ特徴があるそうです。

肺癌

肺癌は男性死亡率1位の癌です。

原因は、喫煙、職業的物質(アスベストなど)、大気汚染、遺伝などが挙げられます。やはり喫煙が重要で、小細胞癌と扁平上皮癌と強い関連があります。

肺癌の発生部位である肺野と肺門で症状は異なります。

肺野型は早期では無症状のことが多く、肺門型は呼吸器の症状が出やすいです。

病気の進行に伴い、胸痛、呼吸困難、発熱、全身倦怠感、体重減少などが見られるようになります。

さらに病変の部位によりばち指、迷走神経の枝である反回神経麻痺による嗄声、上大静脈症候群などが見られることもあります。

非小細胞癌

  • 扁平上皮癌 頻度は約35%。喫煙と強い関係あり。肺門・肺野に好発し、無気肺や空洞形成をつくることもあります。
  • 腺癌
    頻度は約45%。肺野に好発し、スピキュラを形成し胸膜嵌入像となることもあります。
  • 大細胞癌
    頻度は約5%。肺野に好発し、ノッチサイン像となることもあります。
  • その他 腺扁平上皮癌、カルチノイド腫瘍

 

  • 小細胞癌
    頻度は約15%。喫煙と強い関係あり。肺門・肺野に好発し、進行が早く化学療法や放射線療法の感受性が強いことが特徴です。

※肺腫瘍の良性腫瘍に、過誤腫、硬化性血管腫などがあります。全体の数%程度です。

治療法

  • 非小細胞癌
    Stage分類で治療法が選択されます。
    外科的切除、化学療法、放射線療法の組み合わせが中心となります。
  • 小細胞癌
    転移しやすく手術適応は少ないです。
    通常は化学療法、放射線療法が選択されます。

 

皮膚癌

表皮から生じ、扁平上皮細胞、基底細胞、メラノサイトの細胞から構成されています。

非メラノーマ皮膚癌

扁平上皮細胞、基底細胞から発生する癌のことで、体の他の部位まで拡がることは稀です。

メラノーマ

最も稀な形態で周辺組織に浸潤し、体の他の部位まで拡がる可能性が高くなる。

 

前立腺癌

大部分が腺癌です。

前立腺の辺縁領域に好発し、男性ホルモン(アンドロゲン)依存性に増殖する性質があります。

50歳以上の男性に好発し、欧米人に多いです。日本でも近年は増加傾向です。

早期には無症状で、進行すると排尿障害や血尿などの症状が発生します。

早期発見に欠かせないのが血液検査です。腫瘍マーカーのPSAは前立腺癌に対し鋭敏です。

症状が発生することなく死亡し、その後の剖検などで初めて前立腺癌が発見されることもあります。このような腫瘍をラテント癌と言います。

治療法
外科的治療、放射線療法、内分泌療法などの単独または併用が選択されます。

陰茎癌 2020/6/12 追加

第72回 国家試験 AM50の選択肢にあったので、追記してます。

亀頭、包皮内板に発生する悪性腫瘍だそうです。

  • 初期症状 亀頭・包皮の無痛性腫脹、発赤、潰瘍形成
  • 進行すると、疼痛、出血、排膿などを伴う

50、60代の男性に好発し、真性包茎を有する人に好発するそうです。また人パピローマウイルスとの関連もあるそうです。

鼠径リンパ節に転移しやすいという特徴もあるそうです。