クモ膜下出血は、英語でsubarachnoid hemorrhageと言います。
略してSAH(ザー)と呼ばれることも多いです。
国家試験の画像問題でも、良く出題されています。
また新卒技師の方も、現場で遭遇する疾患です。遭遇した際に困らないように知識を整理しておきましょう。
クモ膜下出血と脳動脈瘤は、切っても切れない関係があります。
ですのでクモ膜下出血・脳動脈瘤について、説明します。
クモ膜下出血
病態
脳卒中の中のクモ膜下出血は、何らかの原因で出血がクモ膜下腔(クモ膜と軟膜の間)に生じるものを言います。
原因
80%以上が脳動脈瘤の破裂で、40~60代の女性に好発します。ここでは主に脳動脈瘤の破裂について説明します。
脳動脈瘤破裂が原因のクモ膜下出血は、死亡することや重度後遺症を残すことも多いです。
社会復帰できる、重度後遺症が残る、死亡する割合は、おおよそ1/3と言われています。
クモ膜下出血で脳動脈瘤破裂以外の原因は、
- 脳動静脈奇形(AVM) 5~10%程度。20~40代の男性に好発します。
- もやもや病
- 事故や外傷など
となります。
症状
突然バットで殴られたような激しい頭痛があり、意識障害や嘔吐などを伴うことが多いです。
私が救急で検査を担当する時も、このようなことが多いです。中には普通に歩いて外来に来る患者さんもいます。
検査
クモ膜下出血では、CTやMRが非常に有用です。
クモ膜下腔に出血が波及しますので、脳表面、脳実質外に出血が広がります。
CTやMRでは、ヒトデ型の出血や脳溝内の出血が、画像に現れます。


このように画像でクモ膜下出血を確認した場合は、脳動脈瘤を探すために造影CT検査を行うことが多いです。
造影CTで脳動脈の抽出を目的とする検査は、施設毎によって検査の仕方が決まっていると思います。
この際に注意することがあります。それはクモ膜下出血時の造影検査では、プロトコルもしくはマニュアル通りではうまく行かないことが多いです。
クモ膜下出血の時は、
- 脳血管攣縮で脳血管が狭窄している
- 脳の腫脹があり脳圧が高い
ことが多いです。ですから思ったように脳血管が造影されにくいのです。
そのため通常通りの撮影ではなく、これらのことを考慮して検査をする必要があります。
治療法
私がレントゲン技師であることを前提として書いています。
全身管理、術前管理や術後管理等は、書籍等を参考にしてください。
治療法は、以下の2つが代表的です。
- クリッピング → 開頭し、動脈瘤の根元をクリップします。
- コイリング → IVRで脳動脈瘤をコイルで塞栓します。

その他に、動脈瘤被包術と言われるコーティング術やラッピング術などの手技もあります。
合併症
合併症として、
- 再出血
- 脳血管攣縮
- 水頭症
- 脳浮腫
- 脳ヘルニア
- けいれん発作
などが挙げられます。
予後に大きく関わる合併症として、再出血と脳血管攣縮が重要となります。
脳血管攣縮
出血した血液成分などにより、脳血管が一部もしくは全体的に狭小化し、血流が低下することを言います。時に脳梗塞になることもあります。
脳動脈瘤
ここからは脳動脈瘤について説明します。
病態
脳表面を覆っている主要な脳動脈の分岐部に発生する膨隆のことです。
原因
脳動脈の分岐部には、中膜という膜が欠損していることが多いようです。
血管壁は、内膜、中膜、外膜で構成されています。
そこに高血圧、動脈硬化などの後天的な要素が加わり、動脈瘤が形成されていると考えられています。
症状
未破裂動脈瘤でも、瘤が神経を圧迫して発見される動脈瘤も数%程度あります。
内頚動脈周囲にできた動脈瘤が動眼神経などを圧迫して、眼の症状として現れることが多いです。
検査
検査には、血管造影、造影CT、MRなどで抽出することができます。
未破裂動脈瘤は、脳ドックなどのMR検査で発見されることも多いです。
そして精査目的で、造影CTや血管造影などの検査を行うのが、一般的な流れであると思います。
治療法
未破裂動脈瘤が破裂する前に、外科的治療を行うこともあります。
年齢・健康状態・破裂リスクなどを様々な条件を考慮して行われます。
外科的治療法は、クモ膜下出血の治療法と同様です。
脳動脈瘤の好発部位と破裂しやすい部位
脳動脈瘤の好発部位
- IC-PC 内頚動脈―後交通動脈分岐部(internal carotid artery – posterior communicating artery)
- Acom 前交通動脈(anterior communicating artery)
- MCA 中大脳動脈分岐部(middle cerebral artery)

その他、前大脳動脈遠位(ACA)、内頚動脈-眼動脈分岐部(IC-Oph)、脳底動脈先端(Basilar top)、脳底動脈―後下小脳動脈分岐部(VA-PICA)など
脳動脈瘤の破裂部位
- IC-PC 内頚動脈―後交通動脈分岐部
- Acom 前交通動脈
- Basilar top 脳底動脈先端

破裂の危険因子
大きさ
大きければ大きいほど破裂しやすいそうです。
- 10mm未満 小~中型動脈瘤 動脈瘤の約7~8割程度。
- 10~24mm 大型動脈瘤
- 25mm以上 巨大動脈瘤
形状
動脈瘤の形態は、ほとんどが嚢状です。そして破裂しやすい動脈瘤も嚢状となります。
ブレブ(bleb)を伴う動脈瘤も、破裂しやすいです。
紡錘上の動脈瘤もあります。
紡錘状脳動脈瘤
脳底動脈に発生しやすく、
- クモ膜下出血
- 脳動脈解離
となる場合があります。
脳血管検査で、狭窄や拡張が不規則に連続したpearl and string sign が知られています。
家族歴
家族にクモ膜下出血の患者のいる家系
まとめ
クモ膜下出血と脳動脈瘤は密接に関連しています。
クモ膜下出血は、現場で遭遇する疾患です。
出血の有無、出血があった場合の動脈瘤の検索など、画像診断が大きな役割を果たします。
激しい頭痛、嘔吐が見られた場合は、クモ膜下出血を疑います。
クモ膜下出血は、クモ膜下腔に出血が波及します。
脳表を覆っている脳動脈にできた、動脈瘤が破裂することで出血します。
出血がある場合、脳動脈瘤を検索する造影CT検査では撮影法に気をつける必要があります。
脳動脈瘤の好発部位、破裂しやすい場所があります。
治療法は、主にクリッピングとコイリングが選択されます。