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仕事関連

拡散強調の概要について

拡散強調の概要について書きます。国試に良く出題されるものが中心となります。

参考図書 金原出版株式会社,MR・超音波・眼底 基礎知識図解ノート

拡散は、水の中にインクを垂らした時に次第に濃度が均一になるイメージを持てば良いと思います。(ただしこのイメージは濃度差があることが前提となっていることに注意です。)

次第に濃度が均一になる過程で、実際には水分子のブラウン運動が関与しております。水分子が不均衡に衝突することで発生しているそうです。

この拡散を強調した画像が、拡散強調画像になります。この拡散強調画像は、T2値や密度の影響を受けることから、拡散画像でないことに注意してください。拡散強調画像 ≠ 拡散画像

T1強調画像 ≠ T1画像と同じです。

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EPI法

EPI法は、超高速で撮像できるパルスシーケンスになります。励起RFパルス後に傾斜磁場を高速反転して、反転ごとに信号を取得し、1回の励起パルス後にk空間のすべての行を埋める信号を取得します。

最初の励起方法の違いでSE -EPI法、GRE -EPI法となります。上の図では90°,180°パルスが使用されているのでSE -EPI法になります。GRE -EPI法はα°のパルスになります。

1度励起した後は、傾斜磁場を高速反転することで、k-spaceを一筆書きで埋めるイメージです。

EPI法は超高速で撮像できるのですが、その代償として次のような特徴があります。

●化学アーチファクトは、位相エンコード方向に出現します。

k-spaceを一筆書きで埋めるので、位相方向のズレが蓄積されてしまうイメージで良いと思います。通常のk-spaceの埋め方は、「→」の一方通行で1行毎に位相ズレはリセットされます。

●様々なアーチファクトが出現します。

磁化率の違いや磁場の不均一に敏感に反応します。
また拡散強調に特徴的なN/2(エヌハーフ)アーチファクトも出現します。

●空間分解能が低く、S/Nも低いです。

●TE平均化、T2フィルタリングとボケが生じます。

b値

b値は、拡散をどれくらい強調するかを選択するパラメータになります。

MPGの強度、MPGの間隔、印加時間の3つで1セットになります。MPG (motion probing gradient)とは、拡散を検出する傾斜磁場になります。

b=0の画像は、拡散を強調しないでT2値や密度に影響されます。よってT2強画像と類似した画像になります。臨床では嚢胞や炎症等をざっくり見たい時に有用と思われます。

またb値を高くするには、MPGの傾斜磁場強度を上げることになります。しかし機器には限界がありますので、印加時間で稼ぐ必要あり。するとTEが延長してしまい、SNRが低下してしまいます。臨床で良く使用するb値は、ざっくりですが800〜1000程度と覚えておくと良いと思います。

ADC値

ADC値は、見かけの拡散係数と呼ばれます。異なるb値の拡散強調画像の信号強度より求められます。(例 b=0,1000)

ADC値を画素値として画像化したものをADCmapと言います。これはT2値や灌流の影響を除外するために用いられます。以下に例を示します。

b=1000の拡散強調画像で高信号だから、すぐに拡散が強調されていると判断するのは注意です。b値が高い拡散強調画像で高信号になるパターンに、T2 shine throughというものがあります。これはT2値が延長して高信号になっております。

よって拡散が強調されているのか、それともT2 shine throughなのか。これを判別するためにADCmapが用いられます。ADCmapで低信号なら拡散制限、高信号ならT2 shine throughと判断できると思います。