MRIのコイルについてまとめましたので、参考にしてください。
参考図書
- 秀潤社,決定版 MRI 完全解説 第2版
- 金原出版株式会社,MR・超音波・眼底 基礎知識図解ノート ※私が所有しているのは第1版ですが、最新は第2版です。
静磁場コイル
常伝導磁石については割愛します。
超伝導磁石
超伝導状態とすれば、電気抵抗がなくなり、一度コイルに電流を流すと永久に流れます。大量の電流を流すことが出来る(限界はあり、臨海電流と言います。)ので、高磁場装置に用いられます。
ただし超伝導状態を維持するために、静磁場(ソレノイド)コイルを液体ヘリウムで満たされた低温槽(cryostat)に収めて冷却する必要があります。
クエンチ
超伝導状態から常伝導状態に急激に変化することをクエンチと言います。超伝導状態で流れていた電流が受け、熱を発生します。その熱が低温槽に伝わり液体ヘリウムが気化します。この気化したヘリウムガスが低温槽から排気されます。
この気化したヘリウムガスの体積は、約700倍になるそうです。窒息の危険もありますので、速やかに室内から排気することや患者さんの検査室外への退避が重要となります。
永久磁石
永久磁石に求められる主な条件は次の通りです。
- 残留磁束密度が大きいこと
強磁性体が外部磁場にさらされ、磁化されると磁石となります。ではこの磁石となった強磁性体を外部磁場にさらされてない状態にした時どうなるでしょう。
それは残留磁束密度の大きさによって決まります。残留磁束密度が大きいと磁石のままですが、小さいとすぐに磁石としての能力を失ってしまいます。よって永久磁石に求められる条件の一つ目は、この残留磁束密度が大きいことです。
- 保持力が大きいこと
磁石となった強磁性体ですが、残留磁束密度をゼロにするためには極性が反対の大きい磁場をかけなければならないそうです。このゼロにするために必要な磁場を保持力と呼びます。二つ目に求められる条件は、この保持力が大きいことです。つまりすぐに磁石としての性能を失われては困るという事です。
現在では残留磁束密度、保持力が共に大きいネオジム磁石が、MRI用永久磁石として使われています。このネオジム磁石の弱点は、温度変化に弱いです。よって国試に良く出題される恒温対策が必要となります。
その他の特徴をざっと挙げておきます。
- 低磁場装置(0,3Tなど)で使用されることが多い
- 重い(8~10tなど)
- 漏洩磁場が少ない
- 電気代がかからない
- 静磁場が垂直方向
- 閉所恐怖症の方に優しい感じ
- インターベンションに適している
シミング
シミングは、静磁場を均一に調整することを言います。
- 受動シミング(passive shimming)
装置設置時に行います。撮影室内や磁石内壁に小さい強磁性体を貼り付けて微調整します。
- 能動シミング(active shimming)
コイルに電流を流して磁場を調整します。装置設置後も撮像ごと(患者さんごと)に行われます。傾斜磁場や専用のシムコイルで行われます。
傾斜磁場コイル
編集中
RFコイル
RFコイル(送信)
被写体を均一にRFで励起する必要がありますので、被写体全体を囲む形態になります。
本体に組み込まれていて、volume coil もしくは body coilと呼ばれます。
- 鞍型、鳥籠型は、超伝導磁石に用いられます。
- ソレノイド型は、永久磁石方式に用いられます。静磁場が鉛直な装置です。
RFコイル(受信)
volume coil
体全体が均一な感度で撮影され、体幹部に適しています。狭い範囲を高分解能撮影するには適していません。
表面コイル
狭い範囲を高分解能撮影するには適しています。
関心領域に接近して配置することができるので、信号Sが高くできます。また関心領域外の感度が強く制限されるため、雑音Nが低くなります。
コイルに近いとこ、遠いとこで感度ムラが大きくなってしまいます。
また撮像範囲が狭いからといって、コイルの径を大きくするとS/Nは低下してしまいます。
フェーズドアレイコイル(位相調整複数配列コイル)
表面コイルは狭い範囲しか撮像出来ませんが、フェーズドアレイコイルは広範囲を高いSNで撮像出来ます。
複数のコイルを配置して、同時に信号を受信し、位相を調整することにより、高いSNで撮像できる受信専用のコイルのことを言います。全てのコイルに個別の受信システムを持ちます。