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MR

MRで使用される主な造影剤について

ここではMRIで使用される主な造影剤について、まとめてみたいと思います。

概要(2019/10/21 追加)

MRの造影剤は、T1回復、T2減衰の時間を同時に短縮する作用があります。

  • T1回復を短縮し、T1強調画像で高信号
  • T2減衰を短縮し、T2強調画像で低信号

しかし薬剤の量、濃度、スキャンパラメータ(TR、TEなど)や磁場の強さなどの影響を受けます。

※ここでは造影剤濃度と信号強度については、割愛します。

 

この造影剤のメカニズムに関係するのは、次の2つです。

  • 双極子相互作用
  • 磁化率(常磁性体、超常磁性体)

双極子相互作用(DDI)は、プロトンが、近くの励起されたプロトンや電子に影響を受ける現象を言います。

MRで使用される造影剤は、すべて常磁性体です。

常磁性体とは外部磁場がないときには磁化せず、磁場を印加するとその方向に弱く磁化されるという性質を持っています。

この常磁性体は孤立電子をもち、それが大きな磁気モーメントを持っています。この磁気モーメントが、DDIにより局所磁場の変動を起こし、プロトンのT1回復、T2減衰を短縮します。

 

超常磁性体は、磁化率の高い常磁性のことを言います。

DDIがなくても、局所磁場の均一性を崩すことができます。これによりT2*緩和時間が短縮されることになります。

細胞外液性Gd造影剤

Gdイオンを有する常磁性体です。

Gdイオンは、体内に吸収されると毒性が強いです。

そのため、キレート化と呼ばれる処理が施されています。これは体内に吸収されないようにし、一定時間内に体外へ排泄されるようにするための処理です。

Gdイオンを静脈内に注入すると、全身の血管や細胞間隙に非特異的に分布します。

プロトンが常磁性体(の不対電子)に近づき、電子陽子双極子相互作用によりプロトンのT1およびT2*緩和時間が短縮されます。

薬剤なので、もちろん禁忌や副作用があります。

禁忌 次の患者には投与してはならない
Gd系造影剤に対し過敏症の既往歴のある患者

原則禁忌 次の患者には投与しないことを原則とするが、特に必要とする場合には慎重に投与すること
気管支喘息の患者
重篤な腎障害のある患者
重篤な肝障害のある患者
一般状態の極度に悪い患者

慎重投与 以下の要因を有する患者は副作用発現の観点からリスクが高いことを認識し、より慎重に投与すべきである
アレルギー体質の患者
既往歴を含めて痙攣、てんかんおよびその素質のある患者
高齢者
幼児、乳児、低出生体重児、新生児、乳児
妊婦
授乳婦

重大な副作用
ショック
アナフィラキシー様症状
痙攣発作
腎性全身性線維症(nephrogenic systemic fibrosis:NSF)

腎性全身性線維症(nephrogenic systemic fibrosis:NSF)とは

全身性皮膚疾患のことです。通常、四肢と体幹に左右対称に見られます。
NSF患者のほとんどで重篤な腎疾患が認められますが、中等度の腎機能障害でも数例報告があるそうです。

発症:造影剤投与から2~3ヶ月後、時に数年
初期症状:疼痛、痒み、腫脹、紅斑、通常は下肢から発症

排泄
Gd造影剤は、投与後2時間までに約60%以上、投与後6時間までに80%以上が尿で排泄されます。投与後24時間までには、90%以上が排泄されます。

肝特異性造影剤(SPIO)

SPIOは、超常磁性酸化鉄微粒子のことです。

静脈内に投与された後は、肝臓のKupffer細胞に取り込まれます。

Kupffer細胞に取り込まれたSPIOは、細胞内に集積し強力な常磁性体となり周囲の局所磁場を乱し、T2*緩和時間を短縮します。

SPIOはKupffer細胞に取り込まれるため、プロトンに近づくことはできません。よって、T1緩和時間は短縮されません。

要するに、

SPIOは肝のKupffer細胞に特異的に集積し、T2*緩和時間を短縮します。

Kupffer細胞を有する正常肝、Kupffer細胞を持たない悪性腫瘍(肝細胞癌、転移性肝癌など)を診断するのに有用です。

2020/10/27 以下追記

T2Wにて、

  • 肝細胞癌や転移性肝癌 → Kupffer細胞がないため、高信号。
  • 正常肝 → Kupffer細胞が造影剤を取り込み、低信号。

となります。

禁忌 次の患者には投与してはならない
本剤の成分または鉄注射剤に対し過敏症の既往歴のある患者
一般状態の極度に悪い患者
ヘモクロマトーシス等鉄過剰症の患者
出血している患者

慎重投与 以下の要因を有する患者は副作用発現の観点からリスクが高いことを認識し、より慎重に投与すべきである
アレルギー体質の患者
貧血治療のため鉄剤を投与している患者
出血傾向のある患者
など

その他注意すべき患者
高齢者
小児
妊婦
授乳婦

重大な副作用
ショック
アナフィラキシー様症状

排泄

腎から排泄されることはないので、腎機能の制限がありません。
肝臓を介して、赤血球などに取り込まれ、排泄されるそうです。

肝特性性造影剤(EOB)

第65回 午前30より

 

従来の細胞外液性Gd造影剤が、肝細胞に特異的に集積するようにした造影剤です。

静脈内投与後、通常の細胞外液性Gd造影剤と同様に、血管内および細胞間隙にも非特異的に分布します。

肝細胞に取り込まれ、その後毛細血管を経て胆汁へ移行します。

血流評価をダイナミックで行うことができ、対象病変の肝細胞機能(EOBの取り込み)も評価することが可能です。

投与後20分後くらいから、肝細胞造影層の撮像が可能です。そして造影効果は120分程度持続するそうです。

2020/10/27 以下追記

造影後の脂肪抑制T1Wでは、

  • 正常肝 → 造影剤を取り込み、T1短縮効果の影響で、高信号。
  • 肝細胞癌や転移性肝癌 → 造影剤を取り込まないため、低信号。

となります。

禁忌 次の患者には投与してはならない
Gd系造影剤に対し過敏症の既往歴のある患者

原則禁忌 次の患者には投与しないことを原則とするが、特に必要とする場合には慎重に投与すること
気管支喘息の患者
一般状態の極度に悪い患者

慎重投与 以下の要因を有する患者は副作用発現の観点からリスクが高いことを認識し、より慎重に投与すべきである
アレルギー体質の患者
重篤な腎障害のある患者

その他注意すべき患者
高齢者
小児
妊婦
授乳婦

重大な副作用
ショック
アナフィラキシー様症状

排泄

投与後は、尿と便で排泄されるそうです。文献によりますと、約6割が尿として、約4割が便で排泄されるそうです。

その他の造影剤

経口消化管造影剤

マンガンMnを有効成分とした経口消化管陰性造影剤です。

強いT2短縮効果を備えているため、T2強調画像では低信号になります。

MRCPなどの背景信号を抑制するのに利用されます。

Gd系造影剤と比べても高いT1短縮効果も備えかねているので、T1強調画像では強い陽性効果も示します。

禁忌
消化管の穿孔またはその疑いのある患者
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

その他注意すべき患者
高齢者
小児
妊婦
授乳婦

排泄
投与後48時間までに、約90%近くが便として排泄されます。

超音波で使用される造影剤

参考までに、超音波で使用する造影剤も紹介しておきます。

肝臓の精査などで、微小気泡を造影剤として使用することがあります。

造影剤を静脈内に注入後、2分くらいまでのVascular imaging(血管早期、後期相)では、肝臓の実質内や腫瘍の血管構築を観察することができます。

造影剤はKupffer 細胞に貪食されやすい性質があるため、10分以降ではKupffer imaging(実質相)を得ることができます。この実質相では、欠損像を確認することで、腫瘍や転移性肝癌の検出に有用です。