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MRIのアーチファクトについて

2021年になってから、頻繁にMRIに携わっております。本記事は私の勉強不足なこともあったため、MRIアーチファクトについての記事を更新しました。こちらを参考にしてください。(2022年3月)

追記や訂正を行いました。2021.9.4

ここ最近、夜勤や休日しかMR撮像していないカワシマです。

国家試験でも良く出題されているMRのアーチファクトについて、まとめてみました。

随時更新していきますので、参考にしてください。

Contents

アーチファクトの分類

まずはアーチファクトの発生する要因は、3つに分類することができます。

MRの原理に関するもの

患者に関するもの

  • モーションアーチファクト
  • マジックアングルアーチファクト

システム異常に関するもの

  • RFジッパーアーチファクト
  • 静磁場の不均一によるアーチファクト
  • 傾斜磁場によるアーチファクト
  • ドットアーチファクト
  • コーデュロイアーチファクト

 

各アーチファクト

各アーチファクトについて、概要を説明します。

折り返しアーチファクト

FOV外のものが、FOV内に重なって表示されるアーチファクトです。

エリアシングアーチファクトとも言われます。(2019/1/29 追記)

周波数エンコード方向にも発生しますが、位相エンコード方向に発生しやすいです。

※周波数エンコード方向のエリアシングは、ナイキスト理論を満たさない時に発生するそうです。ほぼシステム的に解消してくれるので、気にしなくて良いそうです。(2021.9.4追記)

折り返しアーチファクトを防ぐための対策

  • FOVを大きくする → 空間分解能が低下します。
  • 過剰サンプリングを行う → 位相方向では撮像時間が延長します。
  • 表面コイルを使用する → 感度領域は狭いため、FOV外の信号を取得しません。
  • FOV外にsaturation pulseを印加する → IR pulseを用いるため撮像時間が延長します。

 

磁化率アーチファクト

物質の磁化率の差が原因で生じる現象で、画像の歪みや信号が消失します。

磁化率アーチファクトの影響の大きさ(シーケンスで比較)

EPI法>GRE法>SE法>高速SE法

エコープラナーイメージング法(EPI法と記載します)で最も顕著に出現します。

次にグラディエントエコー法(GRE法と記載します)で出現しやすいです。GRE法は180°パルスを使用せずに、傾斜磁場の反転を用いることが関係しています。

スピンエコー法(SE法と記載します)は、再収束パルスを利用するため、GRE法に比べて出現しにくいです。

高速SE法では複数の180°パルスを使用するため、さらに出現しにくいです。

ちなみに、磁化率は次のような公式があります。

磁化(M)=磁化率(X)×H(磁場)

磁化率アーチファクトは、磁場が歪んでいるので、ケミカルシフトの考え方も必要となってきます。詳細は割愛しますが、ケミカルシフトに関しては次のような関係があります。

静磁場強度が大きいと、ケミカルシフトも大きくなる
バンド幅が小さいと、ケミカルシフトは大きくなる
よってこの問題の解答は、広いバンド幅を用いるとケミカルシフトの影響が小さくなる、つまり磁化率アーチファクトの影響を少なくすることが期待できるということになります。

 

打ち切りアーチファクト(2021.9.4 訂正、2020/12/25 追記)

ごちゃごちゃしていたので、訂正がてら内容を修正してます。ご了承ください。(青字)

トランケーションアーチファクトとも言われます。(2019/1/29 追記)

またはギブズ(Gibbs)アーチファクトと呼ばれることもあります。ちなみにギブズは数学用語らしいです。

上の画像もそうですが、他に膝関節や頚椎でアーチファクトが出現することもあります。

  • 頚椎 脊髄内に細い縦線のような高信号
  • 膝関節 半月板損傷と間違えてしまいそうな高信号

これらも打ち切りアーチファクトが原因で、頚椎の場合はギブズ(Gibbs)現象と言われることもあるそうです。(2019/1/31 追記)

MR信号のデータ収集を、撮像時間の関係で、ある範囲内で打ち切ることで生じます。

すると信号強度が急に変わる場所(境界など)で発生します。

周波数エンコード方向に比べ、位相エンコード方向に出現しやすいです。

全ての周波数成分を利用して、画像再構成するとフーリエ変換では矩形波になります。
データ収集を途中で打ち切る場合、高周波成分がカットされ、フーリエ変換では矩形波になりません。その際には、リング効果が現れます。これがアーチファクトの原因となります。

打ち切りアーチファクトを防ぐための対策

  1. エンコード数(データサンプリング数)を増加します → 位相方向では撮像時間が延長します。これが基本だと思います。
  2. 空間分解能を向上させます(matrix増加、FOV縮小) → SNRが低下します。下のこじつけ参照。
  3. 高空間周波数領域にフィルタをかけます

2019/2/10 追記しました。

2020/12/25 さらに追記しました。

2021.9.4訂正(以下青字箇所)

ここから下はこじつけな気がします。

バンド幅とサンプリング時間サンプリング間隔には、逆数の関係があります。

バンド幅 = 1/サンプリング間隔サンプリング時間

= (周波数方向)ピクセル数/サンプリング時間

サンプリング時間 = (周波数方向)ピクセル数 / バンド幅

よって、以下2つが関連してきます。

  • サンプリング時間を長くするには?長くします

これは上の落書きを参照すると、理解しやすいと思います。切断している箇所を、横に延長します。そうするとsinc関数のサンプリング時間が延長して、右側の台形のウネウネが少なくなるイメージです。

上の式から、(周波数方向)ピクセル数を増やす or バンド幅を小さくする になります。

(周波数方向)ピクセル数を増やすには、上の対策②空間分解能を向上させます(matrix増加、FOV縮小)となります。

  • バンド幅を小さくします

逆数の関係を思い出します。

サンプリング時間を延長させるためには、バンド幅(分母)を小さくします。

サンプリング時間 = 1(周波数方向)ピクセル数を増やす/バンド幅

この公式を覚えていれば、下のRFパルス(横幅がサンプリング時間)とバンド幅のイメージが湧くと思います。

上のサンプリング時間を長くするのと関連していますが、RFパルス(sinc関数)とフーリエ変換には次のような関係があります。

横に広いRFパルス ⇔ 狭いバンド幅

横に狭いRFパルス ⇔ 広いバンド幅

つまりサンプリング時間を延長したい場合は、狭いバンド幅を選択すれば良いということになります。

クロストークアーチファクト

RFパルスが完全な矩形波ではないために、隣接するスライス面の一部を励起することで生じます。

RFパルスによるクロストークのイメージ

 

このクロストークが発生すると、SNRの低下やT1強調を強めることになります。また、撮像断面がクロスする部位では、無信号となります。

時折登場する手作り感満載のイメージ図を参考にすると、スライス感覚が狭い方がクロストークの影響が強くなることが分かると思います。

クロストークアーチファクトを防ぐための対策

  • スライス間隔を大きくする → 連続した画像が取得できなくなる恐れがあります。
  • インターリーブ法を用いる → インターリーブ法を用いることで、100%ギャップ(クロストークなし)の画像を取得できますが、撮像時間が2倍になります。
  • RFパルスを矩形波に近づける →RFパルスが矩形波に近づくと、スライス間隔を小さくしてもクロストークの影響を少なくすることが可能と思われます。ただしその分スライス枚数が増加するなどの影響が予測されます。

 

インターリーブ法

例えば6スライスの撮像を考えます。

通常のシーケンスでは、スライス1~6の順番に励起します。この際、隣接するスライスにクロストークが発生します。

そこでインターリーブ法を用います。

インターリーブ方では、次の2通りが考えられます。

  1. 同一のTRで励起する順番を変更します。
    1→3→5→2→4→6とすれば、クロストークの影響を小さくすることができます。
    ただし完全にクロストークの影響を排除することはできません。
  2. 異なるTRで励起します。
    1TR目に1→3→5と励起します。
    2TR目に2→4→6と励起します。
    こうすればクロストークの影響が100%除去されますが、撮像時間が2倍になります。

 

モーションアーチファクト

検査中の動きが原因で出現するアーチファクトです。

動きには、次のようなものがあります。

  • ゴースト像 周期的な動きで、呼吸による体動、腸間の蠕動、心臓の拍動、血液や脳脊髄液の流れなどがあります。
  • ボケ像 体の動き、嚥下運動、目の動きなどがあります。

動いた方向に出現するのではなく、位相エンコード方向の位置ズレとして出現します。これはデータ収集の時間に関係しています。周波数エンコード方向では[msec]に対して、位相エンコード方向では撮像時間[sec]~[min]となっているためです。(2021.9.4 追記)

モーションアーチファクトを防ぐための対策

  • ゴースト間隔を大きくする
  • SWAPする → 周波数と位相のエンコード方向を変えて、アーチファクトの判断を行います。
  • 前飽和パルスを使う → 前飽和パルス(presaturation pulse)を利用し、体動部位の信号を抑制し、アーチファクトを低減します。
  • gatingを利用する → 呼吸や心臓の拍動などの周期的な動きに対しては、同期(gating)を利用することが有効です。
  • 体動部位の固定強化を行う

 

マジックアングルアーチファクト

腱や靭帯などの長軸方向が、静磁場方向と55°になると発生するアーチファクトです。腱や靭帯のT2値が延長し、TEの短いシーケンス(T1W、PDW)で高信号となります。

 

エヌハーフゴーストアーチファクト

このアーチファクトは、EPI(エコープラナーイメージング)で発生するアーチファクトです。現場では、拡散強調画像が良く用いられる頭部で出現することがあります。

EPIは傾斜磁場を高速で反転させて撮像を行う手法です。傾斜磁場を高速反転させて、データをk空間に充填するのですが、その際に位相の誤りが生じてしまうために発生します。

そのため、位相エンコード方向にゴースト像としてアーチファクトが出現します。例えば、うっすらとした頭部がもう一つ見られるようなイメージです。このゴースト像は、データの半分(k空間の軌跡の奇数or偶数)で生じるため、エヌハーフゴーストと呼ばれます。

位相の誤りが生じる原因として、次のようなものが考えられます。

  • 渦電流
  • 不完全な傾斜磁場
  • 磁場の不均一性
  • エコーのタイミングの不一致

 

オススメの書籍について(2019/10/16 追記)

MRIに関してオススメの書籍を教えて欲しいというリクエストがありましたので、ご紹介したいと思います。

私が今まで購入した書籍等についてですが、これ1冊あれば全てカバーできるというような魔法の書籍はありません。

いくつかの書籍を交互に見比べて、理解を深めて行ってます。

その中でカワシマが、国家試験対策もしくは理解を深めたい若手技師に向けて、勝手に

オススメする書籍は2つです。

国家試験対策は、広く浅く!?

まずはじめにご紹介するのが、国家試験対策として。

私の中では、範囲は広く、内容は浅い印象です。

他の書籍に出てこないキーワードなども書かれていますが、内容はそこまで深くないと思っています。しかし、国試対策には十分ではないかと考えています。

超音波についても記載されていますが、そちらはノータッチです。

※同シリーズに放射線治療版もあります。私は知らかなったのですが、学生から良い評判を聞きましたので、参考までにリンクを張っておきます。

もっと深く理解を深めたい

若手技師の方には、次の書籍をオススメします。

私が所持しているものは版数が古いですが、これでスピンエコー法などの基礎を学びました。

そしてメーカーのエンジニアと話したりしていると、こちらの書籍で勉強を始めた方が多かったです。