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髄膜炎

髄膜炎は、クモ膜下出血とほぼ同様の症状が見られる疾患です。

検査をして画像で髄膜炎と診断されるわけではありません。

しかし、画像でクモ膜下出血を否定することが重要となります。
画像で病気を見つけるのではなく、否定するために検査をします。

画像で病気等を見つけるというのが、王道のように思っている方もいるかと思います。しかし今回は、それとは少し様子が異なった疾患について説明します。

病態

クモ膜下腔(クモ膜、軟膜、その両者に囲まれている)に炎症が起きたもののです。
クモ膜下出血では出血が、髄膜炎では炎症がクモ膜下腔に波及します。

脳にはBBB(blood-brain barrier)と呼ばれる血液脳関門があります。
BBBは、脳と脊髄の毛細血管に存在し、血液中から流入してくる成分を厳しく制限しています。このBBBにより、病原体だけでなく、免疫細胞も容易に通過することはできないようになっています。

何らかの原因により病原体が髄液腔に侵入してしまうと、免疫細胞がすぐにBBBを通過できません。

そのため免疫反応が起こる時には、既に病原体が多くなっていて、炎症や浮腫が急激に広がっていることが多いです。

脳と脊髄の毛細血管にはBBBという血液脳関門という特殊な構造が存在します。

このBBBは、臨床でも国試でも大切な知識になります。

BBBは、血液中から脳などに入ってくる物質移動を厳しく制限しています。
これは内部環境を一定に保つ必要があるためです。

脳組織において、
正常組織はこの制限のおかげで、造影されることはありません。
BBBが破綻すると、造影効果が見られたり、血管性脳浮腫が起こったりします。

通過可能
ガス(O_2、CO_2)、水、電解質、グルコース、アミノ酸(選択的に通過)

通過不可能
低分子化合物、蛋白質、脂質の一部、薬剤※、白血球
※ただし、アルコールや麻酔薬などはBBBを通過しやすい

ただし、脳内でBBBを欠く部位も存在します。国家試験ではここが良く出題されている印象です。これらは覚えてしまった方が、早いと思います。
松果体・下垂体後葉・視床下部の一部・脈絡叢など

 

原因

主に微生物の感染が原因となります。

細菌性髄膜炎

細菌が原因となります。
急性に発症し、死亡率が10~30%と言われています。
早期診断・早期治療が重要となります。

原因となる菌は、年齢によって異なります。

  • 乳幼児   インフルエンザ菌、肺炎球菌、髄膜炎菌
  • 小児~成人 肺炎球菌、インフルエンザ菌、髄膜炎菌
  • 壮年~老年 肺炎球菌、黄色ブドウ球菌、大腸菌

無菌性髄膜炎

多くはウイルスが原因となります。そのため、ウイルス性髄膜炎と同じ意味として用いられます。

80%程度がエンテロウイルスが原因となります。

その他

結核性、真菌性、がん性、薬剤性などが挙げられます。

症状

細菌性髄膜炎

発熱、頭痛、嘔吐、意識障害などの症状があります。クモ膜下出血と同様、髄膜刺激症状もあります。

ウイルス性髄膜炎

発熱、頭痛、嘔吐などの症状があります。項部硬直は比較的軽度です。

検査

クモ膜下出血とほぼ同様の症状が見られるため、鑑別が重要となります。

そのために、CTもしくはMR検査が選択されます。
この検査では、病気を見つけるのではなく、

出血病変をしっかり否定することが重要となります。

検査をして何もないから、病気がないということにはなりません。

出血病変が否定できたなら、腰椎穿刺による髄液検査をします。
髄液の細胞数や蛋白の変化で診断をします。さらに原因菌を特定するために、培養などの髄液検査も行います。

私は現場で次のような経験があります。

髄膜炎を疑うので、MRの単純検査の指示がされました。
検査した結果、MRで信号変化なしです。

だから異常なしと診断されてしまいました。
画像で出血病変が否定できたから、異常なしとするのはNGです。

造影したら画像に現れていたかもしれませんが、

画像はあくまでも診断で使用するツールの一つである

ことを忘れないでください。

ですので、症状をしっかり観察し、必要であれば腰椎穿刺をすることが重要となります。

腰椎穿刺を行った方が確実ですし、早期診断・早期治療に繋がると思います。

技師が腰椎穿刺を行うわけではありません。しかし、知識や選択肢を持つことは、医師と良好なコミュニケーションをとるためにも必要であると思います。

治療法

原因菌や症状に対しての、内服治療が中心となります。

まとめ

髄膜炎は、クモ膜下出血と同様の症状が見られます。

現場で数は多くはありませんが、ゼロでもありません。

いざという時のために、しっかり知識を吸収しておくのがベターでしょう。

髄膜炎の特徴

クモ膜下出血と同等の症状が見られます。

CTやMRで出血病変を、否定することが大切です。

画像で何もないから、病気ではないということではありません。