国家試験で良く出題されいてる、肝臓の疾患について記載します。
随時更新していきます。
肝硬変
慢性進行肝疾患の終末像で、最終的には肝不全に至ります。
- 代償期 肝機能がある程度保たれていて、ほとんど無症状の時期を言います。
- 非代償期 肝機能障害が進行し、黄疸、腹水、肝性脳症、門脈圧亢進などが出現します。
好発:C型(65%)、B型(15%)慢性肝炎の既往のある人、大酒家(10%)
有名な症状:腹部膨満感(腹水)、腹壁静脈怒張、食道胃静脈瘤、肝性脳症など
画像診断:肝表面の凹凸不整、肝縁の鈍化、腹水、脾腫など
肝癌
肝細胞癌(95%) | 肝内胆管癌(数%) | 転移性肝癌 | |
原発/転移 | 原発 | 原発 | 転移(原発より多い) |
原因 |
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詳細不明 |
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組織型 | 肝細胞に類似 | 腺癌がほとんど | 腺癌が多い |
典型的な所見 超音波 |
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典型的な所見 造影CT |
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腫瘍マーカー |
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肝細胞癌
肝細胞癌は、肝動脈からの血流が主体で、門脈血流はほとんどありません。
- 造影CT検査では、ダイナミック撮影が行われ血流の評価も行われます。
肝細胞癌は肝動脈から支配を受けることがほとんどのため、早期相で濃染され、門脈相や遅延相では徐々にwash outされ、低吸収となります。
- 造影MR検査では、CTと同様に血流の評価が可能です。
SPIO 鉄剤、Kuffer細胞に貪食され、信号値を低下。肝細胞癌や転移性肝癌にはKuffer細胞ないため、高信号のままとなる。EOB 正常肝細胞に取り込まれ、高信号となる。肝細胞癌や転移性肝癌は取り込まれないため、低信号となる。
治療法
肝障害度、腫瘍数、腫瘍径などを考慮し選択されます。
肝切除、経皮的局所療法、肝動脈化学塞栓療法、肝動注化学療法、肝移植などがあります
経皮的局所療法
超音波やCTガイド下で経皮的にアプローチして行う治療です。
侵襲が少ないため、繰り返し施行できるのが特徴です。
現在はRFAが治療成績が良好のため、主流となっているそうです。
- RFA(ラジオ波熱凝固療法)
電極針を腫瘍に到達させラジオ波を照射することで、腫瘍を焼灼壊死させます。
1回の照射で焼灼できる範囲が広いのが特徴です。 - PMCT(経皮的マイクロ波凝固療法)
RFA同様に、腫瘍に電極針を到達させマイクロ波を照射します。あまり普及はしていないそうです。 - PEIT(経皮的エタノール注入療法)
腫瘍にエタノールを注入し、腫瘍を壊死させる方法です。
エタノールが均一に広がらないという欠点があり、再発率は高めであるそうです。
TACE(肝動脈化学塞栓療法)
腫瘍に栄養を送る動脈をゼラチンなどの固形物質で塞ぐことで、腫瘍を壊死させる手法です。これをTAE(肝動脈塞栓療法)と言います。
塞栓物質に抗癌剤(ミリプラチン、エピルビシンなど)を加えて行う治療をTACEと言います。腫瘍の大きさや個数を問わず治療ができることが利点です。
- 禁忌
肝細胞癌は門脈に浸潤しやすく、門脈本幹など大きな門脈枝に腫瘍塞栓をつくることがあります。門脈が塞栓されると、肝臓の栄養は肝動脈から供給されることになります。
この状態で肝動脈を塞栓すると、正常な肝の栄養も途絶されてしまいます。そのため門脈塞栓がある場合は、TACEの禁忌となります。
転移性肝癌
肝臓以外の臓器に発生した原発巣から、肝臓へと転移して発生した腫瘍で、原発性肝癌よりも頻度は高いです。
肝臓は肺と並び、悪性腫瘍が最も転移しやすい臓器です。それは動脈血のみでなく、門脈血も流入するためです。
よって門脈血から消化器癌(特に大腸が多く、膵、胃、胆道など)や、動脈血からは肺癌、乳癌の転移が多いです。
腹部超音波で、bull”s eye sign、辺縁不整な結節などを認めます。
腹部造影CTでは、低吸収域の腫瘤辺縁にリング状の造影効果を認めることが多いです。これは腫瘍の中心部は壊死しやすいことから、早期相、遅延相でも低吸収域となることが多い。
肝炎
肝炎について、表にまとめてみます。
DとEは、割愛します。
ウイルス | A | B | C |
核酸 | RNA | DNA | RNA |
感染経路 | 経口感染(生牡蠣) | 血液、体液、母子感染 | 血液感染 |
感染様式 | 一過性で、ほとんど慢性化しない | 一過性>持続性 慢性肝炎は主に無症候性キャリアから発症 |
持続性>一過性 成人の初感染からも容易に慢性化する |
感染リスク | 海外渡航 | 薬物中毒者 医療従事者 同性愛者 |
薬物中毒者 医療従事者 |
進行 | 劇症肝炎 | 慢性肝炎 肝硬変 肝細胞癌 劇症肝炎(最多) |
慢性肝炎 肝硬変 肝細胞癌 劇症肝炎 |
合併症 | 急性腎不全 溶血性貧血 赤芽球 再生不良性貧血 |
多発動脈炎 糸球体腎炎 |
骨髄抑制 糸球体腎炎 クリオグロブリン血症 |