脳出血は、英語でIntracerebral hemorrhageと言います。
略してICHと呼ばれることも多いです。
脳卒中の中の、脳出血について説明します。
脳卒中は、脳出血、クモ膜下出血、脳梗塞を総称して言います。
過去の国家試験では、画像問題は見つかりませんでしたので正常画像を元に説明します。
しかし現場では良く遭遇する疾患ですので、知識を整理しておくと良いでしょう。
病態
脳実質内に出血する病変のことです。脳実質に栄養している血管が破綻し出血します。
脳実質を栄養している血管は、穿通枝(せんつうし)と呼ばれる細い血管です。穿通枝は、前大脳動脈、中大脳動脈や後大脳動脈などの主要な脳動脈から分岐しています。
穿通枝は、造影CTやMRAでは、なかなか抽出が困難です。
前大脳動脈、中大脳動脈や後大脳動脈など主要な脳動脈は、脳表を走行しています。
ちなみに学生レベルでは、穿通枝の血管名までは覚える必要性はないと思います。
技師になっても、betterというレベルだと思います。
脳梗塞と同じような症状が見られることも多いので、鑑別が重要となります。そのために画像診断が重要な役割を果たします。
原因
主に高血圧です。過食、運動不足、塩分の過剰摂取などの生活習慣が関連し、高血圧になっていることが多いです。
脳ドックなどのMR検査で、リスクファクターが見つかることもあります。
T2*という撮像の仕方で、高血圧が原因で発症する無症候性の微小出血が見つかることがあります。これが脳出血のリスクファクターです。
また非高血圧性の脳出血もあります。それは皮質下出血です。
代表的な要因は、
- 若年層では脳動静脈奇形(AVM)
- 高齢層では脳アミロイドアンギオパチー
となります。
アミロイドーシス
アミロイドが臓器に沈着することで、機能障害を発症することを言います。全身の臓器に付着するものと、限局的に付着するものがあります。
脳アミロイドアンギオパチー
アミロイドーシスの一種で、アミロイドが脳に限局的に付着し、血管壁の脆弱化が起こります。
沈着がひどい場合は、血管が破綻し皮質下出血を発症する。
アルツハイマー型認知症に高い確率で合併する。
ここでは、現場で良く遭遇する高血圧性の脳出血について説明していきます。
治療法
私が診療放射線技師であることを前提として書いています。
全身管理等については、記載はありません。技師目線で、説明しています。
治療法は、意識レベル、血腫量や出血部位などにより異なります。
ここでは、外科的治療が適応となる一般論について記述します。
- 血腫量が多い → 血腫を除去する手術を行います。
- 脳ヘルニア → 頭蓋骨を除去し、脳圧を下げる開頭外減圧術を検討します。
- 脳室穿破 → 水頭症を発症する心配があるときは、脳室ドレナージを行います。
私が現場で遭遇する術後の検査では、複合的な処置をされていることが多いです。
脳出血の好発部位
高血圧性の脳出血には、好発部位があります。
- 被殻
- 視床
- 小脳
- 脳幹
このうち被殻と視床の脳出血が、約7割程度になります。出血する部位により、症状や治療法が異なってきます。
被殻出血
全脳出血の約40%程度で、最も多い部位になります。
レンズ核線条体動脈という血管が破綻することが多いです。

大脳基底核は、以下で構成されています。
- 尾状核
- 被殻
- 淡蒼球
さらに
- レンズ核 被殻+淡蒼球
- 線条体 尾状核+被殻
で構成されています。
症状は突然現れ、頭痛、意識障害、失語症、片麻痺や感覚障害などを発症します。
血腫量が多い時は、外科的治療法が選択されます。
視床出血
全脳出血の約30%程度で、被殻に次いで多い部位になります。
視床穿通動脈、視床膝状体動脈という血管が破綻することが多いです。

症状は突然現れ、頭痛、意識障害、片麻痺や感覚障害などを発症します。
血腫量が多くても、一般的に外科的治療はされません。
それは視床が、内包の内側に位置しているからです。内包には、神経繊維がたくさん通過しています。血腫を除く際に、内包を通過している神経繊維を傷つけるリスクがあるためです。
小脳出血
全脳出血の約10%程度です。
上小脳動脈から分枝している血管が破綻します。
症状は突然現れ、激しい後頭部痛(クモ膜下出血と似ている)、回転性めまい、嘔吐などを発症します。
血腫が増大し、脳幹を圧排し呼吸中枢に影響を及ぼす危険があります。
よって、血腫量が少量でも外科的治療法が選択されることが多いです。
脳幹(橋)出血
全脳出血の約10%程度である。
脳底動脈橋から分枝している血管が破綻します。
症状は突然現れ、意識障害、呼吸障害、四肢麻痺などを発症します。
脳幹には、呼吸中枢があります。この呼吸中枢などを傷つけることはできないので、外科的治療法の適応はありません。
まとめ
脳出血の特徴は、次の通りです。
現場で良く遭遇する疾患です。
脳梗塞と同様の症状が現れることも多いので、鑑別が重要となります。
鑑別には、画像診断が大きな役割を果たします。
脳実質内の出血です。
脳実質に栄養している穿通枝が破綻して出血します。
主な原因は高血圧が原因です。
脳出血には、好発部位があります。被殻と視床が、約7割程度です。
出血部位により、症状や治療法が異なります。