脳出血は、英語でIntracerebral hemorrhageと言います。
略してICHと呼ばれることも多いです。
臨床現場でも良く遭遇する疾患になりますので、知識を整理しておくと良いでしょう。
脳卒中は、脳出血、クモ膜下出血、脳梗塞を総称して言います。
主な参考文献 MEDIC MEDIA,病気がみえる vol7 脳・神経
病態
脳実質内に出血する病変のことです。脳実質に栄養している血管が破綻し出血します。
脳実質を栄養している血管は、穿通枝(せんつうし)と呼ばれる細い血管です。穿通枝は、前大脳動脈、中大脳動脈や後大脳動脈などの主要な脳動脈から分岐しています。
穿通枝は、造影CTやMRAでは、なかなか抽出が困難です。
前大脳動脈、中大脳動脈や後大脳動脈など主要な脳動脈は、脳の表面を走行しています。
学生レベルでは、穿通枝の血管名までは覚える必要性はないと思います。
脳梗塞と同じような症状が見られることも多いので、鑑別が重要となります。そのために画像診断が重要な役割を果たします。
原因
主に高血圧です。過食、運動不足、塩分の過剰摂取などの生活習慣が関連し、高血圧になっていることが多いです。
脳ドックなどのMR検査で、リスクファクターが見つかることもあります。T2*で、ヘモジデリンが付着して低信号域を見ることがあります。これは無症候性の微小出血の痕で、microbleeds と言われます。
また非高血圧性の脳出血もいくつかあります。代表的なのは皮質下出血で、主な原因は次の2つが多いと思われます。
- 若年層では脳動静脈奇形(AVM)
- 高齢層では脳アミロイドアンギオパチー
- 脳腫瘍
経験したお話になります。脳動脈瘤が破裂した場合はクモ膜下に出血することが多いですが、動脈瘤の大きさや破裂部位、破裂方向によっては脳実質に出血する事もあるようです。
アミロイドーシス
アミロイドが臓器に沈着することで、機能障害を発症することを言います。全身の臓器に付着するものと、限局的に付着するものがあります。
脳アミロイドアンギオパチー
アミロイドーシスの一種で、アミロイドが脳に限局的に付着し、血管壁の脆弱化が起こります。沈着がひどい場合は、血管が破綻し皮質下出血を発症します。アルツハイマー型認知症に高い確率で合併します。
治療法
診療放射線技師目線で、必要と思われる事を抜粋して記載してます。
治療法は、意識レベル、血腫量や出血部位などにより異なります。
ここでは、外科的治療が適応となる一般論について記述します。
- 血腫量が多い → 血腫を除去する手術を行います。
- 脳ヘルニア → 頭蓋骨を除去し、脳圧を下げる開頭外減圧術を検討します。
- 脳室穿破 → 水頭症を発症する心配があるときは、脳室ドレナージを行います。
私が現場で遭遇する術後の検査では、複合的な処置をされていることが多いです。
脳出血の好発部位
高血圧性の脳出血には、好発部位があります。
- 被殻 40%
- 視床 30%
- 小脳
- 脳幹
このうち被殻と視床の脳出血が、約7割程度になります。出血する部位により、症状や治療法が異なってきます。
被殻出血
全脳出血の約40%程度で、最も多い部位になります。
レンズ核線条体動脈という血管が破綻することが多いです。

大脳基底核は、以下で構成されています。
- 尾状核
- 被殻
- 淡蒼球
さらに
- レンズ核 被殻+淡蒼球
- 線条体 尾状核+被殻
で構成されています。
症状は突然現れ、頭痛、意識障害、失語症、片麻痺や感覚障害などを発症します。
血腫量が多い時は、外科的治療法が選択されます。
視床出血
全脳出血の約30%程度で、被殻に次いで多い部位になります。
視床穿通動脈、視床膝状体動脈という血管が破綻することが多いです。

症状は突然現れ、頭痛、意識障害、片麻痺や感覚障害などを発症します。
血腫量が多くても、一般的に外科的治療はされません。
それは視床が、内包の内側に位置しているからです。内包には、神経繊維がたくさん通過しています。血腫を除く際に、内包を通過している神経繊維を傷つけるリスクがあるためです。
小脳出血
全脳出血の約10%程度です。
上小脳動脈から分枝している血管が破綻します。
症状は突然現れ、激しい後頭部痛(クモ膜下出血と似ている)、回転性めまい、嘔吐などを発症します。
血腫が増大し、脳幹を圧排し呼吸中枢に影響を及ぼす危険があります。
よって、血腫量が少量でも外科的治療法が選択されることが多いです。
脳幹(橋)出血
全脳出血の約10%程度である。
脳底動脈橋から分枝している血管が破綻します。
症状は突然現れ、意識障害、呼吸障害、四肢麻痺などを発症します。
脳幹には、呼吸中枢があります。この呼吸中枢などを傷つけることはできないので、外科的治療法の適応はありません。