学生の方へむけて、情報を発信しているカワシマです。
今回は散乱線除去用グリッド(以降はグリッドと呼びます)について書きます。
病院実習などで見た記憶がある方もいらっしゃると思います。
グリッドは簡単に言うと、板です。
レントゲンを撮影する時、検出器の被写体側に乗せたりかぶせたりします。
この板が、画像の劣化を防いでくれるのです。
被写体にX線を照射すると、散乱線が発生します。
この散乱線は、コントラストの低下や画質の低下を招く原因になります。
被写体の厚さが厚いほど、照射野が大きいほど、管電圧が高いほど、散乱線は増大します。
グリッドを使用すると、被写体から発生する散乱線を除去してくれます。
被写体を透過したX線のみ検出器に到達させてくれるので、コントラストの改善や画質向上が期待できます。

グリッドを使用した際の、検出器周辺のX線イメージ
ただし、グリッドは画像形成に必要なX線も除去してしまいます。
そのためグリッドを使用しない時より、撮影時の線量を上げる必要があります。
画像コントラストは改善するけれども、患者さんの被ばく線量が上がるということになります。
現場では、撮影部位や患者さんの体型で使用するかを決定します。また使用するグリッドの種類もあるので、撮影法に注意する必要があります。
ここでは、国家試験に出てきそうな内容を書いておきます。
Contents
グリッドの原理
被写体に入射するX線のうち、X線吸収が少ない中間物質の箇所ではX線が透過します。鉛はくの部分は入射X線も透過しません。被写体から発生する散乱線は垂直ではなく様々な方向に向かって発生するため、鉛はく部分で吸収されます。
グリッドの構造
薄い鉛はくと中間物質の薄い板が交互に配置されています。中間物質にはX線吸収の少ないアルミニウム、紙、木や合成樹脂などが使用されています。

X線吸収率の異なるはくを、長手方向に平行に配置したグリッドを直線グリッドといいます。
表面はアルミニウムやプラスチックなどの薄板で保護されています。炭素線維強化樹脂(carbon fiber reinforced plastic)は加工が困難のため中間物質には使用されず、低X線吸収素材としてカバーに使用され、カーボンカバーグリッドと呼ばれます。
グリッドの構造による種類
- 並行グリッド
吸収はくの面が平行であり、X線の入射面に対して垂直なグリッド。カットオフの問題があり、現在ではあまり使用されていません。
- 集束グリッド
吸収はくの面が集束距離において一つの直線に集束するグリッドです。撮影距離が重要となります。
- クロスグリッド
2枚の直線グリッドを使用し、はくの方向がある角度となります。90°直行グリッドと90°以外で交差する斜交グリッドに分類されます。
グリッドの用途による分類
- 静止グリッド
リスホルムブレンデとも呼ばれます。グリッドを検出器に対して、置いたりかぶせたりするような静止した状態で使用します。
- 運動グリッド
ブッキーブレンデとも呼ばれます。X線照射中にグリッドを検出器に対して、相対的に動かすことのできるグリッドです。装置に組み込まれているイメージで良いと思います。
グリッドの物理的性能
ここら辺の数字は、ややこしいですが国家試験の選択肢などにもなっています。
一次X線透過率
Tp = I’p / Ip
グリッドを置いたとき I’p
グリッドなし Ip
この時の一次X線量の比
散乱X線透過率
Ts = I’s / Is
グリッドを置いたとき I’s
グリッドなし Is
この時の散乱X線量の比
全X線透過率
Tt = I’t / It
グリッドを置いたとき I’t
グリッドなし It
この時の全X線量の比
選択度
Σ = Tp / Ts
正確度は一般撮影±10%、乳房用±5%以内
コントラスト改善度K
K = Tp / Tt
正確度は一般撮影±10%、乳房用±5%以内
露出倍数
B = 1 / Tt
正確度は一般撮影、乳房用±10%以内
一般的にBは小さく、ΣとKは大きいほうが良いとされています。