今回はCTのアーチファクトについてまとめてみました。
現場で良く見るものや、国家試験に出題されているものもあります。
Contents
被写体が原因のもの
ビームハードニングアーチファクト
被写体を透過する際に、連続X線の低エネルギー成分が減少することで線質硬化が起こります。これにより円形被写体の中央のCT値が低下するカッピングや後頭蓋下のダークバンドアーチファクトを引き起こします。
対策
ビームハードニング補正処理
メタルアーチファクト
こちらはイメージしやすいと思います。歯の治療や骨折後の治療で金属などの高吸収物体があると、透過するX線が極小となり正常に再構成できなくなります。これによりストリーク状などのアーチファクトが生じます。また金属周辺では情報が欠損することもあります。
モーションアーチファクト
こちらもイメージしやすいと思います。撮影中に被写体が動くことで発生します。
撮影条件が原因のもの
パーシャルボリューム効果(部分体積効果)
現場でも良く遭遇するもので、国家試験でも良く出題されています。
良く目にするCT画像は縦×横の2Dですが、実際にはスライス厚という高さも関係しています。2Dで見る画像のCT値は、単位体積(ボクセル)あたりのCT値を平均した値となっています。そのボクセル内に複数のCT値が異なる物質がある場合、物質の占める割合でCT値が決まります。よってスライス厚内の、組織の辺縁など占める割合が小さい場合は、不明瞭になってしまいます。

パーシャルボリューム効果のイメージ
対策
薄いスライス厚を使用する→空間分解能の向上、ノイズ増加
国家試験第69回 午後
87 X線CTの部分体積効果で正しいのはどれか。
1.臓器の辺縁が不明瞭になる。
2.微小な構造物の描出に役立つ。
3.管電流を大きくすることで低減する。
4.スライス厚を厚くすることで低減する。
5.リング状アーチファクトの原因になる。
解 1
CTの画像ではアーチファクトが観察されることがあります。このアーチファクトは、本来存在しないものが画像になってしまう、もしくは存在するものが見えないことを言います。
そのアーチファクトの中に、パーシャルボリューム効果(部分体積効果)というものがあります。この影響により、CT値が不正確になり、組織の辺縁が不明瞭になることがあります。
CT画像で表示される濃度は、各voxel(pixel×スライス厚)の平均値となります。あるvoxel内に複数のCT値が存在する場合は、そのCT値の含まれる割合で決定します。
高吸収が原因となるアーチファクト
肩関節や股関節を撮影した場合、一定の方向に高吸収物質があるため、X線量が減少して再構成が不良となります。これによりヤスリ状アーチファクトが発生します。
対策
投影データのスムージング→空間分解能低下
ヘリカルアーチファクト
ヘリカルスキャンのピッチファクタの設定が要因となり発生します。ピッチファクタが大きいと、高吸収物体周囲に発生しやすいアーチファクトです。
ウィンドミルアーチファクト
ヘリカルアーチファクトが、マルチスライスCTでは風車状(ウィンドミル)のアーチファクトとなることがあります。ピッチファクタの設定が要因で、高吸収物体周囲に発生するアーチファクトがある。
ステアステップアーチファクト
ヘリカルアーチファクトやウィンドミルアーチファクトは、スライス位置で連続的に変化することから、構築した3次元画像で螺旋階段状のアーチファクトを生じます。
再構成間隔が十分に細かくない場合にも階段状のアーチファクトが発生します。
対策 再構成間隔を細かくする
コーンビームアーチファクト
コーン角が大きい場合(DAS数の多いマルチスライスCT)、コーン角補正が不良となり発生します。骨などの高吸収物体の周辺に発生することが多いです。
装置が原因のもの
ストリークアーチファクト
1個の検出器のデータが、1つの投影角度で異常となった時に生じます。複数の投影角度で発生すると接線ストリークや不完全なリングアーチファクトとなります。
リングアーチファクト
1本のストリーク像が、全ての投影角度で連続して発生することで生じる。
シャワー
特定の方向の全ての検出器が異常データとなる場合に発生します。X線管の出力異常が原因のことが多いようです。
その他
寝台やガントリに造影剤などが付着していることがあります。この付着した造影剤のせいで、CT値が以上となることもあります。
私の施設でも発生したことがあります。常に付着する造影剤を取り除くよう、掃除を心掛けると良いと思われます。
国家試験
第69回 午後
10 CTのアーチファクトでないのはどれか。
1.リング
2.シャワー
3.コーンビーム
4.ケミカルシフト
5.ビームハードニング