循環器の概要として、体循環と肺循環にざっくりまとめています。
参考にして下さい。
参考図書 メディックメディア社、病気がみえる vol.2 循環器
体循環と肺循環
循環器は、主に血液を体内で循環させるためのシステムと考えて良いと思います。このシステムで重要となるのが、心臓と脈管系です。
心臓がポンプの役割をして、血液を全身の隅々まで届けます。そして役割を終えた血液が心臓に戻ってきます。この時血液が通る道を脈管系と言い、動脈系、静脈系、リンパ系があります。
体循環
全身の細胞に必要な物質(酸素や栄養など)を届けるために、心臓が血液を全身に送り出します。そして全身の細胞に必要な物質が届けられると、今度は二酸化炭素を含む血液が心臓に戻ってきます。
この経路のことを体循環と言います。
心臓から送られる血液は酸素を多く含む動脈血で、心臓に戻る血液は二酸化炭素を多く含む静脈血です。
経路概要 心臓→動脈系(動脈血)→全身の細胞→静脈系(静脈血)→心臓
肺循環
心臓に戻ってきた二酸化炭素を含む静脈血のガス交換を行うために、心臓から肺に血液が送られます。そしてガス交換を行い、酸素を多く含んだ血液が心臓に戻ってきます。
この経路のことを、肺循環と言います。
心臓から送られる血液は静脈血、心臓に戻る血液は動脈血です。
経路概要 心臓→肺動脈(静脈血)→肺→肺静脈(動脈血)→心臓
循環 | 動脈 | 静脈系 |
体循環 | 動脈血 | 静脈血 |
肺循環 | 静脈血 | 動脈血 |
胎児循環
胎児の循環は、出生してからの循環と異なり特徴があります。その特徴がたまに出題されています。
- 胎盤~胎児の心臓へ向かう(赤字は酸素を多く含んだ動脈血)
臍静脈 → 静脈管(アランチウス管、肝臓内は通らない) → 下大静脈 → 心臓
- 心臓、肺循環(肺呼吸する必要がないため、特殊な構造のみ記載)
右心房 → 卵円孔 → 左心房 → 大動脈
肺動脈 → 動脈管(ボタロー管) → 大動脈弓
- 大動脈から胎盤へ(動脈血と静脈血が混在しているイメージ)
大動脈 → 内腸骨動脈 → 臍動脈 → 胎盤
心臓
血液循環システムの主役で、ポンプの役割を果たす重要な臓器です。
形態は、握り拳よりやや大きい程度で、重さは300グラム前後です。心臓の左側先端はやや尖っており、心尖と呼ばれます。
心房と心室
心臓内部は、血液が通る4つの部屋に分かれています。
上が心房、下が心室で左右一つずつあります。
右心房、左心房、右心室、左心室です。
左右の心房、心室の仕切りがそれぞれ心房中隔、心室中隔となります。
各部屋には出口と入口が一つずつあり、心房と心室間は房室口で連絡しています。
通常の血液は、この各部屋を一方通行で通ります。心房には血液が流入し、心室からは血液が送り出されます。
- 右心房 大静脈から、全身の静脈血が流入し、右心室へ流れます。
- 右心室 右心房から、静脈血が流入し、肺動脈へ流れます。
- 左心房 肺静脈から、ガス交換を終えた動脈血が流入し、左心室へ流れます。
- 左心室 左心房から、動脈血が流入し、大動脈へ送り出します。

弁
心臓内部の血流が一方通行となっているのは、各部屋の出口に存在する弁のおかげです。
この弁が、血液の逆流を防止しています。
房室弁
心房と心室の間(房室口)に存在し、弁尖と呼ばれるヒダからなります。
弁尖は腱索、乳頭筋と連絡し、房室弁の反転防止装置となっています。
- 右房室弁は、3つの弁尖で構成され、三尖弁とも言われます。
- 左房室弁は、2つの弁尖で構成され、僧帽弁、二尖弁と言われます。
動脈弁
心室から出る動脈の出口に存在し、3枚の弁からなります。これが大動脈弁、肺動脈弁であり、半月弁とも言われます。
心筋
心筋は、骨格筋と同様見た目が縞模様であるから横紋筋と呼ばれます。ただ自らの意思で動きをコントロールできないため、不随意筋に分類されます。
さらに固有心筋または作業心筋、特殊心筋の2つに分類されます。
筋原繊維は、多数の筋フィラメントの集合体です。
筋フィラメントは、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントからなります。
- アクチンフィラメント アクチン・トロポミオシン・トロポニンの3つの蛋白質から構成されます。
- ミオシンフィラメント 多数のミオシン分子で構成されています。
冠動脈
心筋を栄養する血管です。大動脈起始部のバルサルバ(Valsalva)洞より分岐し、主要な3枝で構成されています。
- 右冠動脈(RCA:Right Coronary artery) 左室下壁、心室中隔後部、右室を栄養しています。
- (左)前下行枝(LAD:Left Anterior Artery) 左室前壁、心室中隔前部を栄養しています。
- (左)回旋枝(LCX:Left Circumflex Artery) 左室側壁、後壁を栄養しています。
脈管系
心臓から出るまたは心臓に戻ってくるルートを脈管と言います。脈管は動脈、静脈、リンパ系と大別することができる。
- 動脈 心臓から送り出される血液が、各臓器や組織に行く血管です。
- 静脈 各臓器や組織からの血液が、心臓に戻る血管です。
- リンパ系 静脈と同様、各臓器や組織から心臓に戻る脈管です。
脈管の構造
動脈壁は3層(内膜、中膜、外膜)で構成されています。
大動脈などの大型動脈は、中膜に層を成す弾性繊維の発達が見られるので弾性型動脈と言われます。
弾性に富むため、心拍出に伴う血圧や血液量の変化を緩和できます。
中型動脈、小動脈の中膜は、平滑筋細胞が主な要素となるので筋型動脈と言われます。平滑筋は、自律神経による神経性調節などを受けて、血管を収縮・拡張します。
静脈の壁も3層で構成されていますが、動脈壁と比べると薄くなっています。
各臓器や組織から心臓へ戻るルートのため、血液が逆流しないように弁が付いているのが特徴です。
リンパ系の構造は静脈と似ていて、静脈より細く、壁も薄く屈曲凹凸が豊富だそうです。
内腔には多数の弁があるそうです。
栄養血管と機能血管
各臓器に酸素や栄養を運搬する役目がある血管を、栄養血管と言います。
また呼吸や循環などの役割を果たす血管を、機能血管と言います。
大体の臓器は、この栄養血管と機能血管が同一です。
ただし、機能血管と栄養血管が一部異なることがあります。
国家試験で良く出題されています。
部位|血管 | 栄養血管 | 機能血管 |
心臓 | 冠動脈 | 大動脈 |
肝臓 | 肝動脈 | 門脈 |
肺 | 気管支動脈 | 肺動静脈 |
リンパ系
静脈によって吸収されなかった血液の液性成分であるリンパを集めて、リンパ管を経由して静脈まで運ぶ循環系です。
この作用で、組織液が回収され、むくみ(浮腫)が改善されます。
このリンパの循環には、特徴があります。
少し大雑把ですが、次の通りです。
- 右上半身のリンパ
右頭頸部のリンパ ⇒ 右リンパ本幹 ⇒ 右静脈角
右上肢、右乳房のリンパ⇒ 右リンパ本幹 ⇒ 右静脈角
- 左上半身と下半身のリンパ
左頭頸部のリンパ ⇒ 左リンパ本幹 ⇒ 左静脈角
左上肢、左乳房のリンパ ⇒ 左リンパ本幹 ⇒ 左静脈角骨盤と下肢のリンパ ⇒ 乳び槽 ⇒ 胸管 ⇒ 左静脈角
ちなみに静脈角とは、鎖骨下静脈と内頚静脈の合流部のことを言います。左右に1つずつありますが、流入してくる部位が異なります。