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脳梗塞

脳梗塞は、英語でcerebral infactionと言います。
略してCIと呼ばれることも多いです。

上手くまとめられていませんが、情報量という観点で参考にしてください。

脳梗塞は、脳動脈の狭窄や閉塞が原因となり、脳組織が虚血状態や壊死する病態です。
分類には、臨床病型と発症機序により分類されます。

  • 臨床病型による分類
    アテローム血栓性、心原性、ラクナ梗塞、その他
  • 発症機序による分類
    血栓性、塞栓性、血行力学性

ここでは、発症機序による分類について説明します。

参考図書 MEDIC MEDIA、病気がみえる vol7 脳・神経

脳梗塞の発生機序による分類

血栓性

脳動脈が動脈硬化により狭窄している箇所に、血栓が生じて発症します。

アテローム(粥腫:じゅくしゅ)、プラーク

動脈内膜の肥厚、脂質などの蓄積から生じます。
この蓄積などが動脈内に隆起し、動脈硬化の原因になります。

動脈硬化が進行すると、アテローム(プラーク)が破綻し、血栓を形成し、動脈の閉塞や動脈瘤を生じます。

虚血性心疾患、脳梗塞、大動脈瘤の原因などになります。

原因

動脈硬化が進行する中高年に好発します。動脈硬化に関連する、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、大量飲酒などがリスクになります。食事の欧米化や運動不足などが原因とされています。

症状・特徴

症状の典型例を示します。TIA(一過性脳虚血)が先行して見られることもあります。安静時に発症することが多く、階段状、進行性に症状が悪化します。

動脈硬化による動脈の狭窄は、徐々に進行することが多いです。そのため側副血行路が形成されていることも多く、発症初期は比較的症状が軽いこともあります。

TIA(trasient ischemic attack)とは

一過性脳虚血のことで、脳梗塞になりかけ、手前みたいな感じです。

一時的に症状が出現するも、脳梗塞に至る前に症状が消失します。

血栓が小さいため一時的に閉塞し、その後血栓が溶解され血流が再開通した状態です。

血栓が小さいから良かったではなく、塊の一部が遊離したものと考えられるため、脳梗塞のリスクとなります。

側副血行路(Collaterals)とは

コラテと呼ばれます。主要血管が閉塞した場合、代替的に作られる循環経路や迂回路のことです。

塞栓性

心臓や頚動脈に付着している血栓が、原因となる脳梗塞です。

不整脈や心筋梗塞などの心疾患により、心臓内に血栓が形成されることがあります。
その心臓内に形成された血栓が、血流に乗り、血管を塞栓し発症する脳梗塞のことです。

突如血管が塞栓されるため、急に発症し、突発的に症状が完成されます。側副血行路も乏しいため、梗塞巣が大きくなりやすいです。よって重症になりやすく、予後も不良です。

ただし頚動脈の血栓が原因の場合は、心原性ほど病変は大きくないことが多いと言われています。

出血性梗塞の頻度も高いです。
線溶系因子(プラスミンなど)や血流による圧力で、血栓の溶解が進み再開通することもあります。

早期に血流が再開通すれば、症状が改善することがあります。

しかし一度虚血になった血管は脆弱化しています。そこに血流が再開通することで出血してしまう恐れがあります。

症状

日中の活動時に、突然発症します。

血行力学性

主要な動脈に高度の狭窄がある場合、脳の血流は脳循環予備能やコラテで血流を補っていることがあります。

このような状態で、何らかの原因で血圧が低下すると、血管の遠位や細部の血流が低下し発症します。

脳循環予備能とは

主要な動脈に狭窄があると、末梢側への血流が低下します。それを補うために、血管が拡張することで血流を保とうとすることです。

境界領域(分水嶺)梗塞の好発部位として、

  • 前大脳動脈と中大脳動脈の境界部
  • 中大脳動脈と後大脳動脈の境界部
  • 中大脳動脈の皮質枝と穿通枝の境界部

などがあります。

症状

脳組織が障害された部位により、様々な症状をきたします。

  • 片麻痺
  • 構音障害(呂律が回らないなど)
  • 失語
  • 意識障害
  • 嘔吐

などの症状が見られます。

検査

画像診断が有効です。

救急領域では、CTがfirst choiseされることが多いと思われます。「early CT sign」が見られる or 出血病変を否定できたら、MRI or 治療開始となると思われます。

early CT signとは?

  • レンズ核陰影の不明瞭化
  • 島皮質の不明瞭化
  • 皮質・髄質境界の不明瞭化
  • 脳溝の消失

これらは脳組織が浮腫を起こすことで、発見することが可能になります。

MRIは、拡散強調像DWIが有効です。ただしDWIのみでは確定出来ない時もありますので、MRA・FLAIRも有効です。MRAで主要脳動脈の閉塞や狭窄がないかを確認します。FLAIRでは、閉塞した血管等があればその血管が高信号になります。

細胞性浮腫等を今後追記します!

治療法

発症してからの経過時間や塞栓部位や程度で変わってくると思います。

急性期脳梗塞では、主に次の2つの選択肢が挙がります。

  • IVRによる血栓回収
  • rt-PAと呼ばれる血栓溶解療法(rt-PAは、ティーピーエーと呼ばれます。)

脳組織は虚血状態に非常に弱く、数分で虚血状態に陥ると言われています。脳梗塞の治療で大切なのは、へナンプラを救うことが重要となります。

へナンプラとは

閉塞した血管の中心部は、すぐに壊死してしまいます。

ただ周辺部は、機能不全の状態になっていても細胞が生存しています。そのため早期に血流が再開通すれば、回復します。この回復が見込める領域を、へナンプラと言います。

へナンプラを救うことができれば、症状を最低限に抑えることができ、予後に大きく影響します。

ただし、一度虚血になった血管は脆弱化しやすく、血流が再開通すると血液が漏れたり出血を起こしたりすることがあります。

このように脳梗塞の治療には、脳出血というリスクもあります(出血性梗塞と言われます)。

また脳が腫れてしまうこともあります。脳浮腫が悪化して頭蓋内圧亢進の恐れがある場合は、開頭外減圧療法が検討されます。開頭外減圧療法は、頭蓋骨を広範囲で外し、減圧を目的とした手術となります。