胸部疾患の概要ということで、国家試験に出題されているものの概要を記載します。
まとまって見やすいというより、情報量を重視してます。
随時、追記していく方針とさせて頂きます。
肺胞性と間質性
良く耳にする間質性肺炎やair bronchogram、気管支透亮像について説明します。
まずは解剖というか構造から説明します。
気管の末梢は、肺胞という部屋があるイメージです。その肺胞はたくさんあるのですが、肺胞と肺胞の間には仕切りみたいなものがあります。これを間質と言います。
次に炎症を考えます。
肺胞が炎症すると、部屋に炎症が生じます。
そして炎症などにより水が貯留すると、通常は見えない末梢気管支(肺野と末梢気管支は画像上で黒い)が見えてくることがあります。
これをair bronchogramもしくは気管支透亮像と言います。
間質は部屋と部屋の間の仕切りであることは、ざっくり言いました。その間質が炎症を起こすと、通常は見えない肺胞(肺胞や間質の区別はつきません)が見えてくることがあります。
こうなった時に、蜂巣肺や網状影になります。

気胸
壁側胸膜または臓側胸膜が破れることによって胸腔(壁側胸膜と臓側胸膜の間)に空気が貯留した状態です。原因は大きくわけて3つあり、自然気胸、外傷性気胸、医原性気胸です。
自然気胸
原発性気胸
ブラ・ブレブの破裂が原因です。ブラ・ブレブは、肺胞が融合してまとまった大きさの腔となっている状態です。通常は無症状です。
続発性気胸
基礎疾患に伴う気胸(COPD、肺癌、肺結核、膠原病、子宮内膜症 など)
外傷性気胸
交通事故や鈍的外傷(胸壁、肺、気管、気管枝、食道などの外傷性破綻)
医原性気胸
医療行為に伴う偶発的アクシデント(中心静脈カテーテル挿入時、経皮肺針生検 など)
胸部レントゲンで鑑別するポイントは、末梢の血管を観察することです。
下のイラスト(落書きレベルですが)の空気と書かれている箇所を参照してください。空気が貯留しているため、そこに肺の血管等は観察できません。

胸水
気胸は胸腔に空気が貯留しますが、ここに水が貯留すると胸水になります。
ただし原因は異なり、複雑です。
参考程度に記載しておきます。
胸水は、主に壁側胸膜から産生・吸収されます。
産生量は①毛細血管透過性、②静水圧、③膠質浸透圧の3要素に影響されます。
①・②が亢進、③が低下すると胸水が貯留します。
胸水の種類というか、分類と言いますか、2通りあります。
- 胸膜の炎症(胸膜炎)に基づく滲出性
毛細血管透過性の亢進(悪性腫瘍、結核、肺炎、膠原病など) - 非炎症性の漏出性
静水圧亢進(うっ血性心不全など)、膠質浸透圧低下(肝硬変による蛋白産生低下、ネフローゼ症候群による蛋白大量消失など)
胸部レントゲンで鑑別するポイントは、次の通りです。(立位や坐位撮影をイメージしてます。)
よく見る胸水は、肋骨と横隔膜の間?に貯留します。ここを肋骨横隔膜(CPangle)と言います。
あとは葉間胸水も良く見られます。右肺の上葉と中葉の間に胸水が貯留すると、腫瘤のように見えます。これを葉間胸水、vanishing tumor と言います。
2パターンは、下のイラスト(落書きレベルですが)を参照してください。

サルコイドーシス
サルコイドーシスは原因不明で、多くの臓器に発症する疾患です。
全身のいろいろな臓器(頻度が高いのは両側肺門リンパ節、肺、眼、皮膚、唾液腺、心臓、神経、筋肉など)に、結核によく似た病巣を作ります。
国試では、両側肺門リンパ節腫脹ということで、胸部レントゲンの画像が出題されています。第66回 PM 83。

一般にそのような病巣は「非乾酪性類上皮細胞肉芽腫」と呼ばれています。
サルコイドーシスの本体は、感染症ではなく個体のもつ異常な免疫反応と推定されています。もちろん悪性新生物でもありません。若年・中年(20~50歳代)の女性に好発するそうです。
肺うっ血、肺水腫
肺毛細血管から水分が血管外に漏出し、異常に貯留している状態です。
左心不全(心筋梗塞など)が原因となることが大半です。
全身に血液を送り出す力が弱まり、肺で血流が滞ります。
画像としては、肺門部を中心とする陰影(蝶形陰影)が特徴的です。
※蝶形陰影は肺水腫の他にも、ニューモシスチス肺炎、サイトメガロ感染症などでも観察することがありますので、鑑別が必要となります。