硬膜外血腫と硬膜下血腫は、現場でも良く遭遇しますので知識を整理しておくと良いと思います。
頭部外傷などが原因で出血する部位により、硬膜外血腫、硬膜下血腫に分けられます。
急性期では、意識障害、片麻痺、頭蓋内圧亢進のため嘔吐などの症状が見られます。
これらの鑑別には、画像診断が有用になります。
髄膜は、頭蓋骨側から硬膜・クモ膜・軟膜で形成されています。
正常時は、頭蓋骨と硬膜、硬膜とクモ膜は密着しています。
参考図書 MEDIC MEDIA、病気がみえる vol7 脳・神経
Contents
急性硬膜外血腫
急性硬膜外血腫は、Acute epidural hematomaと言います。AEDHと略すこともあるそうです。
病態
頭蓋骨骨折を伴うような強い衝撃が原因で、頭蓋骨と硬膜の間に出血が起こり、血腫を形成する状態です。
出血源
出血源となる血管は、硬膜を走行する中硬膜動脈が多く、側頭部に血腫が形成されます。
画像診断
頭蓋骨と硬膜は、強く結合しています。
よって血腫は、横方向でなく、脳側へ広がることになります。これが凸レンズ型の血腫を形成します。
治療法
血腫の量や脳圧排の程度によりますが、緊急に開頭し、血腫除去、止血を行います。
急性硬膜下血腫
急性硬膜下血腫は、Acute subdural hematomaと言います。時折略語を聞くこともあります。ASDHと言います。
病態
頭部外傷などが原因で、硬膜とクモ膜の間に出血が起こり、血腫を形成した状態です。
脳挫傷を伴うことが多く、受傷直後より意識障害が見られます。
急性硬膜外血腫と比較し、
- 脳浮腫・脳腫脹が重篤
- 重篤な脳挫傷・脳内血腫を伴うことが多い
- 血腫の広がりも早い
これらの理由から、予後は不良です。
児童虐待の死因の第1位となります。揺さぶり症候群などが多く、架橋静脈の断裂や、脳組織の損傷が原因となります。
出血源
出血源となる血管は、脳表の動静脈や架橋静脈です。
架橋静脈
クモ膜下腔を走行し、硬膜下腔を通過して静脈洞に繋がっている静脈のことです。
画像診断
硬膜とクモ膜の結合は弱いため、横方向に広がりやすいです。これが三日月型の血腫を形成します。
硬膜下血腫は、ぶつけた側と真反対に出血が生じることも多いです。
これを、contrecoup injuryと言います。
現場で「コントラクー」と聞いたら、受傷の対側であるということです。
治療法
血腫の量や脳圧排の程度によりますが、緊急に開頭し、血腫除去、止血を行います。
慢性硬膜下血腫
慢性硬膜下血腫は、英語でChronic subdural hematomaと言います。
良く略してCSDHと言われます。
病態
軽度の頭部外傷などが原因で、硬膜下腔(硬膜とクモ膜の間)に、被膜がある血腫を形成した状態です。
被膜の外膜には血管が富んでいて、外膜から少量の出血を繰り返し、徐々に血腫が大きくなります。
そのため、受傷後しばらくしてから発症します(数週間~2,3ヶ月後)。
高齢者やアルコール多飲者に好発します。
画像診断
硬膜とクモ膜は、強く都合しているわけではありません。よって血腫は、横方向に広がりやすいことになります。
つまり硬膜下血腫は、横方向に広がり、三日月型の血腫を形成します。
微小な出血を繰り返していますが、CTでの吸収値は比較的低吸収域となります。

症状
認知症みたいな症状を発症することも多く、認知症の検査に来たらCSDHであることも多いです。
また脳梗塞かと思ったら、CSDHであることも多いです。
ですから、認知症、脳卒中、正常圧水頭症、脳腫瘍などとの鑑別が重要となります。
治療法
脳を強く圧迫して、神経症状がある場合、正中偏位(midline shift)を認める場合などは、外科的治療法が必要となります。外科的治療法には、穿頭ドレナージ術(burr hole surgery)にて血腫の除去が行われます。
硬膜下水腫
クモ膜の損傷により、髄液が硬膜下腔に貯留する病態です。両側に生じやすく、意識障害が見られることもあります。