第72回 診療放射線技師国家試験 撮影技術 AMの解説を作成しました。
良ければ参考にしてください。
参考図書
83 X線が複数の線減弱係数の異なる組織を透過することによって生じるX線写真の陰影変化を説明するのはどれか。
1.重積効果 2.接線効果 3.ヒール効果 4.部分容積効果 5.Groedel<グレーデル>効果
解 1
消去法で解答するのがオススメでしょうか。
2.接線効果は、X線束が被写体に対して接線で入射した時に発生します。
少し難しいですが、随伴陰影と関連しています。随伴陰影は骨の陰影に沿って見える線状陰影のことです。鎖骨の上縁に皮下軟部組織が、肋骨の下縁などに軟部組織が線状陰影で見えることを言います。
3.ヒール効果、4.部分容積効果 割愛します。
5.グレーデル効果は、フラットパネルなどの受像器に到達する散乱線を減少させる撮影法です。受像器に入る散乱線が減ることで、コントラストが向上します。頚椎の側面撮影等が該当します。
問題文より、重積効果はX線が複数の線減弱係数の異なる組織を透過することによって生じるX線写真の陰影変化のことを言うそうです。
84 デジタルトモシンセシスについて正しいのはどれか。
1.CR受像器を用いる。
2.多方向から撮影する。
3.受像器に垂直な断層像を得る。
4.断層面の数と同数の撮影を繰り返す。
5.スライス厚分解能は投影角度には依存しない。
解 2
トモシンセシスについて、勉強不足+使用経験が少ないため詳細は割愛させて頂きます。
1.連続で多断層を撮影するので、CRだと時間分解能的に無理なのではと思います。
3.観察したい部位を、頭尾方向の様々な角度で撮影します。(確か)管球は回転するように動きますが、受像器は水平にしか動きません。
4.と5.の解説は推測です。
4.断層面は無限にあると思います。撮影パラメータの設定次第で、断層数が決まると思います?例えば3°ずつ管球を振って撮影するとか?
5.管球を振っている場合、被写体のスライス厚は厚くなります。そのことでしょうか?
85 順行性と逆行性の両方の造影検査があるのはどれか。
1.食道 2.膵管 3.卵管 4.耳下腺 5.総胆管
解 5
ERCP ファーター乳頭から総胆管や膵管に造影剤を逆行性に注入します。
DIC 特殊な造影剤(ビリスコピン)を点滴で静脈内に投与し、胆道系に集積するタイミングでCTや透視等で撮影します。自然に排泄されるタイミングとなるので、順行性になります。撮影タイミングが難しいです。
PTC エコー等を用いて経皮的に側腹部から胆嚢に針を刺して、造影剤を注入します。胆道系は順向性に造影されることになります。
食道は順行性、卵管はHSGの逆行性が通常であると思います。耳下腺については経験がないので、割愛します。
86 頭部X線写真を示す。この撮影で観察目的となるのはどれか。
1.下顎管 2.顎関節 3.視束管 4.内耳道 5.蝶形骨洞

解 2
画像は顎関節を、閉口位で、撮影したシュラー画像です。
カタカナの撮影法(シュラー、レーゼ、ステンバースetc)と観察部位は、よく出題されているのでセットで覚えると良いと思います。
- 側頭骨(聴器)ステンバース、シュラー
- 顎関節(閉口位、開口位)シュラー
- 視神経管 レーゼ
87 胸部X 線側面写真を示す。後縦隔の領域に含まれるのはどれか。
1.ア 2.イ 3.ウ 4.エ 5.オ

解 3、4
縦隔の分類法は複数あるそうです。複数回になったのも、それが影響していると思われます。エが第何胸椎なのか判別出来ないこと、また椎体を後縦隔に含めるか否かで複数解となったと予測します。

問題画像に区域を記載しましたが、境界が微妙となってしまいました。
※画像に追記する関係で、後縦隔に胸椎を含んでしまってます。
各縦隔の境界は次のようです。
- 上縦隔 胸骨柄下縁と第4胸椎下縁を結んだ線の上部。
- 前縦隔 胸骨と心陰影腹側の間。
- 中縦隔 心陰影の腹側~背側の間。
- 後縦隔 心陰影背側~胸椎の間。
88 食道造影写真Aと胸腹部造影CTBを示す。No. 11Aの直線に一致する水平横断像はNo. 11Bのうちどれか。
1.ア 2.イ 3.ウ 4.エ 5.オ


解 3
第66回 PM 84に類似問題がありました。
2通りのアプローチで行けると思います。
アプローチ①Aの画像から、食道内腔が狭窄していることが分かります。CT画像で食道が狭窄(CT画像で食道の判断が困難)している場所を探します。

アプローチ②Aの画像から、周囲の臓器を観察します。


89 診療放射線技師の対応として適切なのはどれか。
1.車椅子の患者を立位で撮影するため、介助者を待って撮影した。
2.異性の患者と2人きりにならぬよう撮影室ドアを開放して撮影した。
3.胸部X線撮影後に異常所見を発見したため、自己判断で腹部X線撮影を追加した。
4.検査オーダーは右膝X線撮影であったが、患者の依頼で両膝X線撮影を行った。
5.入院患者のリストバンドが汚れていたので口頭での氏名確認のみで撮影を行った。
解 1
車椅子の患者さんを、立位で撮影することは良くあります。その際、一番気をつけることは、転倒させないことです。
よって転倒のリスクを避けるために、配慮する必要があります。
90 上部消化管造影の圧迫撮影で、観察が難しい部位はどれか。
1.胃角 2.噴門部 3.幽門部 4.胃体下部 5.十二指腸球部
解 2
アプローチ①マーゲンのルーチンを覚えていたら、解答できると思います。
アプローチ②先ほどの88CT画像から考えます。噴門部は、体のほぼ中心にあるので、圧迫は困難です。

91 骨盤の造影写真を示す。正しいのはどれか。
1.尿管が描出されている。
2.造影6時間後の撮影である。
3.不妊症の検査として行われる。
4.アレルギー歴の確認は不要である。
5.経尿道的にカテーテルが挿入されている。

解 3
同様の問題が第71回や第67回に出題されています。解説を引用します。
子宮卵管造影(Hysterosalpingography:HSG)は、子宮から造影剤を逆行性に注入します。子宮に注入した造影剤が、卵管の通過、骨盤腔内へ拡散する経過をX線透視装置で撮影します。
管電圧は骨盤なので、おおよそ70kV程度と思われます。(オートで撮影しています。)
HSGは、卵管の疎通性を確認する目的です。もし卵管が疎通していない場合は、閉塞部位や卵管の性状が診断でき、粘膜下子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮内癒着、子宮奇形などの診断にも有用だそうです。
造影剤は、油性造影剤と水性造影剤があります。現在では、大抵水性造影剤が使用されていると思います。
国家試験的には、油性造影剤を使用した場合には24時間後、水性造影剤の場合には数分後に遅延撮影を行うというのが大切になると思います。
この遅延撮影は、卵管の通過性や骨盤腹膜の状態を知るために必ず行わなければならないそうです。
ちなみにHSGは、私の施設でも行われています。ですのでここからは気楽に参考程度に読んでください。
不妊の患者さんにもHSGを行うことがあります。HSGを行うと卵管の癒着や卵管の通りが良くなることで、妊娠しやすくなるそうです。
卵管に造影剤を流し、疎通させるので痛みがあると聞いたこともあります。
92 乳房X 線撮影で正しいのはどれか。
1.標準的な圧迫圧は250 N 程度である。
2.大きな乳房では、より高格子比のグリッドを用いる。
3.X 線管のターゲットとしてタングステンは使用されない。
4.マンモトームの病変の座標設定にトモシンセシスが必要である。
5.MLO方向撮影はCC方向撮影に比べブラインドエリアが少ない。
解 5
私はマンモグラフィを撮影したことがありませんので、そこまで詳しいわけではありません。なのでこの問題は、消去法でアプローチしました。
1.標準的な圧迫圧は250 N 程度である。→100~120[N]程度。
2.大きな乳房では、より高格子比のグリッドを用いる。→低格子比の軟X線グリッド。
3.X 線管のターゲットとしてタングステンは使用されない。→使用されている。
4.マンモトームの病変の座標設定にトモシンセシスが必要である。→超音波と思われます。
そしてブラインドエリアについて、調べたので参考にして下さい。
