第72回 国家試験 医学大要 午後の解説を作成しました。
良ければ参考にしてください。
Contents
50 腎臓の解剖について正しいのはどれか。
1.腹腔内臓器である。
2.皮質は主に集合管からなる。
3.髄質は主に糸球体からなる。
4.髄質は皮質の外側に位置する。
5.右側は左側よりも低位であることが多い。
解 5
通常、腎臓は左右に1つずつあります。右側の腎臓は肝臓があるため、左側より低い位置にあることが多いです。
1.腹腔内臓器である。 → 腎臓は、後腹膜臓器。
2.皮質は主に集合管からなる。
3.髄質は主に糸球体からなる。
→ 皮質・髄質が主に○○で形成されているわけではないと思います。
4.髄質は皮質の外側に位置する。 → 外側が皮質、内側が髄質になります。
51 卵円孔を走行するのはどれか。
1.眼神経 2.下顎神経 3.滑車神経 4.上顎神経 5.動眼神経
解 2
脳神経と走行する孔についても、比較的良く出ている印象です。
こちらを参考にしてください。
52 線条体を構成するのはどれか。2つ選べ。
1.視床 2.被殻 3.尾状核 4.扁桃体 5.視床下部
解 2、3
大脳基底核に関連する問題です。
大脳基底核は、3つあります。
- 尾状核
- 被殻
- 淡蒼球
さらに、
- 線条体 = 尾状核 + 被殻
- レンズ核 = 被殻 + 淡蒼球
と分類されます。
ややこしいかもしれませんが、臨床でも重要な知識となります。
特に被殻は、脳出血の好発部位でもあるので、是非覚えてください。

53 眼球運動に関係するのはどれか。
1.眼輪筋 2.外側広筋 3.内側広筋 4.下斜筋 5.上頭斜筋
解 4
眼球運動に関する筋の問題です。
眼球運動の筋・神経は、ここ数年良く出題されています。過去に解説したものを引用します。
眼球運動に関連する筋を総称して、外眼筋と言います。
外眼筋は次の筋で構成されています。
上直筋、下直筋、内直筋、外直筋、上斜筋、下斜筋。
この各筋がどの方向と関係するかは、煩雑です。
なので覚えるのが簡単な内外方向、直筋を覚えるのが良いと思います。
(内側:内直筋、外側:外直筋)
今度は眼球運動に関わる脳神経についてです。
眼球運動に関連する脳神経は、動眼神経、滑車神経、外転神経です。
外眼筋と、これら神経が複雑に関与することで、眼球運動は成立しています。
外眼筋と神経支配は次のような関係になります。
上直筋…動眼神経
下直筋…動眼神経
内直筋…動眼神経
外直筋…外転神経
上斜筋…滑車神経
下斜筋…動眼神経
マーカーのみ覚えて、後は動眼神経が覚えやすいでしょうか?
外眼筋は、複数の筋が集まって、眼球を動かします。この外眼筋と同じような筋が、国試でも何回か出題されていますので、紹介しておきます。
咀嚼筋は、咬筋、側頭筋、外側翼突筋、内側翼突筋の4つの筋で構成されています。
これらの筋が連携することで、下顎骨を挙上したり、前後に動かすことで咀嚼を可能にしています。
横隔膜をはじめ、外肋間筋、内肋間筋などを総称して呼吸筋と言います。
呼吸をする時は、呼吸筋を動かし、胸郭の体積を変化させます。そして間接的に肺を進展・収縮させています。
横隔膜、外肋間筋は吸気時に働き、内肋間筋は呼気時に働きます。
換気量が増大したときは補助呼吸筋(斜角筋、胸鎖乳突筋、腹壁筋など)も働きます。
また複式呼吸では、横隔膜によって胸郭を動かしています。
胸式呼吸では、横隔膜+肋間筋になります。
54 Basedow<バセドウ>病において正しいのはどれか。
1.GRH が上昇する。
2.TSH が低下する。
3.甲状腺は腫大しない。
4.FT3<非結合型T3>が低下する。
5.FT4<非結合型T4>が低下する。
解 2
バセドウ病は、今までにも良く出題されてきました。ただ今までは、バセドウ病の症状が主体であったと思います。
今回は、バセドウ病を診断する際の、甲状腺ホルモン(FT3、FT4、TSH)がどのような状態になるかの問題でした。
- 遊離サイロキシン(FT4)↑
- 遊離トリヨードサイロニン(FT3)↑
- 甲状腺刺激ホルモン(TSH)↓
55 ヒトにおいて受精は通常どこで起こるか。
1.腟 2.腹腔 3.卵管 4.子宮頸部 5.子宮体部
解 3
解のみとさせて頂きます。受精は通常卵管で起こります。
56 Transcatheter Aortic Valve Implantation<TAVI>が治療として施行される疾患はどれか。
1.心房細動 2.肺高血圧症 3.肥大型心筋症 4.大動脈弁狭窄症 5.僧帽弁閉鎖不全症
解 4
私の勤務する施設では、残念ながらTAVIは行っていないので、TAVIに詳しいわけではありません。ご了承ください。
TAVIは大動脈弁狭窄に対する治療法の1つです。カテーテルを用いて、人工弁を留置します。
他の治療法として、開胸して人工弁を留置する外科的手法、内服で行う保存的治療となっています。
この問題に限ってですが、TAVIが何なのか知らなくても、解答できるようになっていると思いました。それは問題文の英語にヒントがあります。
Transcatheter Aortic Valve(大動脈弁) Implantation
57 血小板を産生するのはどれか。
1.単球 2.巨核球 3.好酸球 4.好塩基球 5.NK細胞
解 2
正攻法で行きますと、血小板は造血幹細胞から分化・成熟を経て、巨核球→血小板となります。
しかし、ここ数年血小板についての出題は少ないです。そこで他の選択肢に注目してみます。単球、好酸球、好塩基球、NK細胞。
これらの単語は、比較的良く見る白血球に関連するものです。
なので今回の問題は、消去法で行くのも1つのアプローチだと思います。
※白血球については、こちらも参考にしてください。
58 自己免疫疾患はどれか。
1.痛風 2.急性リンパ性白血病 3.後天性免疫不全症候群 4.Down<ダウン>症候群 5.全身性エリテマトーデス
解 5
第70回 PM62 に類似問題がありましたので、解説を引用します。
膠原病の概要は、次のとおりです。
- 何らかの自己免疫反応が働く
- 全身に分布している結合組織を中心に炎症が起こる
- 多臓器に障害があらわれる
関節炎では、関節リウマチ、強直性脊椎炎などがあります。
血管炎では、結節性多発動脈炎、アレルギー性肉芽腫性血管炎、川崎病、ベーチェット病などがあります。
その他には、全身エリテマトーデス、全身性強皮症、多発性筋炎、 シェーグレン症候群などが挙げられます。
59 動脈の閉塞による梗塞を起こしにくいのはどれか。
1.肝臓 2.小脳 3.心臓 4.腎臓 5.脾臓
解 1
まず2、3を選択肢から消去できることが、大切だと思います。
2 小脳 → 脳梗塞、3 心臓 → 心筋梗塞
これらは臨床で、良く遭遇する疾患です。
そして解答についてです。
肝臓への血流は、肝動脈(3割)・門脈(7割)です。
またTACEで肝動脈を塞栓することからも、解答できるのではないでしょうか。
※肝臓については、こちらも参考にしてください。
60 開放骨折について正しいのはどれか。
1.単純骨折とも呼ばれる。
2.50 歳以下ではほとんどみられない。
3.疲労骨折の場合にみられることが多い。
4.閉鎖骨折に比べ容易に治癒が得られる。
5.受傷部の感染に対する処置が重要である。
解 5
骨折には、分類の仕方が多くあります。
その1つに、単純骨折・開放骨折と分類することがあります。
それは、受傷部が外界と交通しているか否かで判断します。
外界と交通している場合を開放骨折と言い、受傷部からの感染リスクに対しても処置を行わければなりません。
61 自然気胸の発症と最も関係が深いのはどれか。
1.無気肺 2.気管支炎 3.肺血栓塞栓症 4.気管支拡張症 5.気腫性囊胞<ブラ>
解 5
気胸は、胸腔(壁側胸膜と臓側胸膜の間)に空気が貯留した状態を言います。原因は大きくわけて3つあり、自然気胸、外傷性気胸、医原性気胸です。
大部分の気胸が、自然気胸でブラ・ブレブの破裂が原因となります。
ブラ・ブレブは、肺胞が融合してまとまった大きさの腔となっている状態のことを言います。
気胸については、こちらにも同じようなことを記載しています。
62 先天性心疾患はどれか。
1.大動脈解離 2.僧帽弁狭窄症 3.僧帽弁閉鎖不全症 4.大動脈弁閉鎖不全症 5.Fallot<ファロー>四徴症
解 5
第71回 午後57 に類似問題が出題されています。解説はそちらから、引用します。
先天性心疾患は、心臓の発生過程での心血管系の構造異常が原因で、出生後の循環が異常となる疾患群のことを言います。
先天性心疾患は、全新生児のうち1%前後で、心室中隔欠損症が最も多いそうです。
- 心室中隔欠損症 56.6%
- 肺動脈弁狭窄症 9.6%
- 心房中隔欠損症 5.3%
- 動脈管開存症 3.6%
- ファロー四徴症 4.5%
63 食道静脈瘤の原因で最も多いのはどれか。
1.肝硬変 2.腎不全 3.虫垂炎 4.脾動脈瘤 5.食道アカラシア
解 1
この問題は、食動静脈瘤の原因からアプローチするよりも、肝硬変からアプローチする問題だと思います。
肝硬変になると、肝が正常に働きにくいので、門脈が鬱滞します。(渋滞イメージ)
それでも肝臓へは流入できないので、迂回路として他のルートを選択します。
その過程で、食道胃静脈瘤・腹壁静脈怒張となります。
※肝硬変については、こちらにも記載しています。
64 予防にワクチンが用いられる疾患はどれか。2つ選べ。
1.B型肝炎 2.C 型肝炎 3.HIV 感染症 4.ヘルペス脳炎 5.インフルエンザ
解 1、5
第69回 午前64に類似問題が出題されています。なので解説はそちらから引用します。
予防接種(定期、任意)がされているものの例をいくつか示します。
ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ、麻疹、風疹、BCG、日本脳炎、インフルエンザ、水痘、A・B型肝炎、肺炎球菌などがあります。