第71回 診療放射線技師 国家試験 撮影技術学(PM)の解説を作成しました。
参考にしてください。
参考図書
84 X線撮影の体位を示す。観察部位で正しいのはどれか。

1.橈骨頭
2.尺骨肘頭
3.尺骨神経溝
4.上腕骨滑車
5.上腕骨肘頭窩
解 3
尺骨神経溝の撮影になります。臨床でも指示が出ることがあります。
あと手根管の撮影も覚えておくと良いと思います。
85 右乳腺に腫瘤が触知される患者の乳房X線写真を示す。病変が存在する乳腺の領域はどれか。

1.A領域
2.B領域
3.C領域
4.D領域
5.E領域
解 4
この問題の回答へのアプローチで大切なことが2つあります。
①解剖を理解していること(ABCDE領域)

②画像(CC、MLO)で領域が分かること
この画像では乳頭がはっきりしませんが、ある程度予測出来ると思います。
- CC 画像上で乳頭より上 → 実際は乳房外側 C or D領域
- CC 画像上で乳頭より下 → 実際は乳房内側 A or B領域
- MLO 画像上で乳頭より上 → 実際は乳房上側 A or C領域
- MLO 画像上で乳頭より下 → 実際は乳房下側 B or D領域

86 手技後に撮影されたX線写真を示す。施行された手技として正しいのはどれか。

1.心筋焼灼術
2.肝動脈塞栓術
3.下大静脈フィルタ留置術
4.経カテーテル大動脈弁留置術
5.腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術
解 3
画像では、下大静脈フィルタが留置されています。

下大静脈(IVC:Inferior vena cava)フィルタは、下肢静脈などの血栓が心臓(肺動脈)に到達させないように留置します。肺塞栓や肺梗塞を予防する目的で行われます。
この問題はこれを知らなくても、解剖学が分かればある程度アプローチすることも可能だと思います。

1.心筋焼灼術 → 心臓は写っていません。
2.肝動脈塞栓術 → 肝動脈はもう少し右上部です。
4.経カテーテル大動脈弁留置術 → 心臓は写っていません。ちなみにこれは略してTAVI( transcatheter aortic valveimplantation) と言います。
5.腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術 → 大動脈は椎体の左寄りです。
肺塞栓、肺梗塞
静脈血中に入った塞栓子(血栓、空気、腫瘍など)が血流に乗って肺動脈につまり、低酸素血症となる状態を肺塞栓症と言います。
塞栓子は静脈系で形成された血栓(深部静脈血栓:DVT)が大半であり、この場合を特に肺血栓塞栓症と言います。
塞栓子によって肺動脈が完全に閉塞し、末梢組織が出血した状態を肺梗塞と言います。
DVTの誘発因子
- 血流停滞 長期臥床、長時間のフライト、肥満、妊娠など
- 静脈内皮障害 手術、中心静脈カテーテル留置、外傷・骨折など
- 血液凝固能亢進 経口避妊薬、妊娠など
87 造影後の三次元腹部CT像を示す。S状結腸を栄養する血管はどれか。

1.ア
2.イ
3.ウ
4.エ
5.オ
解 3
同様の問題が第66回撮影技術学PM85に出題されています。
この問題の各選択肢は次のようになります。
- ア 上腸間膜動脈 → 小腸、上行、横行結腸を栄養するため縦長のイメージ。
- イ 下腸間膜静脈 → 下部結腸からの静脈血が門脈となり、肝臓に流入します。
- ウ 下腸間膜動脈 → 下部結腸(下行結腸、S状結腸、直腸)を栄養します。
- エ 外腸骨動脈 → 下肢に行く血管です。
- オ 内腸骨動脈 → 骨盤内を栄養する血管です。
腹部の画像等については、こちらでも解説をしていますので参考にしてください。
88 通常の立位胸部X線写真と比較して、仰臥位ポータブル胸部X線写真の特徴で正しいのはどれか。
1.心陰影は縮小する。
2.胃泡が明瞭となる。
3.側面撮影の画質は向上する。
4.肩甲骨の肺野との重なりが減少する。
5.心陰影に重なる肺血管の抽出が不良である。
解 5
1.心陰影は縮小する。 → 基本は背臥位で撮影しますので、重力等も関連して横に拡大します。
2.胃泡が明瞭となる。→良くわかりません。
3.側面撮影の画質は向上する。→ポータブルで撮影するくらいなので、上肢は下げたままとなることが予想されます。よって画質は向上しません。
4.肩甲骨の肺野との重なりが減少する。→背臥位撮影では、肩甲骨を肺野から外す努力はしないと思います。
5.心陰影に重なる肺血管の抽出が不良である。→通常の胸部撮影では120kV程度で撮影しますが、ポータブル撮影では大体80~90kV程度で撮影をします。よって透過力が下がるため、心陰影背側や縦隔の観察は困難になるというストーリーだと思います。
89 X線CTで患者被ばく量低減のために有用なのはどれか。ただし、他の撮影条件は同じとする。
1.管電圧を上げる。
2.管電流を上げる。
3.自動露出機構を使用する。
4.ヘリカルピッチを下げる。
5.補償フィルタを使用しない。
解 3
1.管電圧を上げると、線質が硬くなります。しかし他の条件は同じということなので、線量は変わりません。被ばく量も変わらないと思われます。
2.管電流を上げると、線量が増えて被ばく量も増加します。
3.自動露出機構を使用すると、位置決め画像から最適な線量分布を求めてくれます。過剰な被ばくを抑えてくれます。
4.ヘリカルピッチを下げると、撮影時間が延長します。よって被ばく線量も増加します。
5.補償フィルタを使用しない。ボウタイフィルタは被写体を透過した後のビームハードニング効果を補正するために設置されています。線質に関連しますが、被ばく量とは関係ないと思われます。そもそも使用しないという選択はできないと思います。
90 ヨード造影剤の総量100mLを2mL/秒の速度で静脈投与して造影CTを行った場合に、検査を受けた患者に最も高頻度にみられるのはどれか。
1.嘔吐
2.熱感
3.腎不全
4.じん麻疹
5.ショック
解 2
造影CTの検査を行うと、大体の患者さんは体が温かくなると言います。回答となる熱感はこのことを言っていると思います。
他の選択肢は全て副作用になります。
参考までに、急性期に発症する副作用の種類と重症度は次のようになります。
- 軽度 嘔気、嘔吐、発汗、咳嗽、蕁麻疹、顔面蒼白、頭痛、腫脹、悪寒etc
- 中等度 頻脈、徐脈、気管支痙攣、喘鳴、高血圧、呼吸困難
- 重度 喉頭浮腫、痙攣、意識消失、著名な低血圧、重大な不整脈、心肺停止
91 顔面X線写真の側面像を示す。アが示す部分はどれか。

1.鼻腔
2.上顎洞
3.前頭洞
4.上咽頭腔
5.蝶形骨洞
解 5
解剖の問題です。鼻腔は側面像だと判断は困難だと思います。
92 子宮卵管造影検査で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.逆行性に造影剤を注入する。
2.X線透視撮影装置を使用する。
3.40kv程度の管電圧で撮影する。
4.骨盤計測を目的とした検査である。
5.ヨード造影剤約30mLを注入する。
解 1、2
同様の問題が第67回撮影技術学AM86に出題されています。
子宮卵管造影(Hysterosalpingography:HSG)は、子宮から造影剤を逆行性に注入します。子宮に注入した造影剤が、卵管の通過、骨盤腔内へ拡散する経過をX線透視装置で撮影します。
管電圧は骨盤なので、おおよそ70kV程度です。(オートで撮影します。)
HSGは、卵管の疎通性を確認する目的です。もし卵管が疎通していない場合は、閉塞部位や卵管の性状が診断でき、粘膜下子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮内癒着、子宮奇形などの診断にも有用だそうです。
造影剤は、油性造影剤と水性造影剤があります。現在では、大抵水性造影剤が使用されていると思います。
国家試験的には、油性造影剤を使用した場合には24時間後、水性造影剤の場合には数分後に遅延撮影を行うというのが大切になると思います。
この遅延撮影は、卵管の通過性や骨盤腹膜の状態を知るために必ず行わなければならないそうです。
不妊の患者さんにもHSGを行うことがあります。HSGを行うと卵管の癒着や卵管の通りが良くなることで、妊娠しやすくなるそうです。
卵管に造影剤を流し、疎通させるので痛みがあると聞いたこともあります。
93 肺条件の胸部CT像を示す。抽出されていないのはどれか。

1.右上葉
2.右中葉
3.右下葉
4.左上葉
5.左下葉
解 1
解剖の問題です。
右肺は3葉ありますので、気管支に注目すると良いと思います。腹側には中葉気管支が、背側には下葉気管支が走行しているスライスになります。
よって上葉が観察出来ないことになります。
気管支については、第70回 医学大要 午後53 も参照してください。
