第71回 診療放射線技師 国家試験 CT、MRI関連 午後の解説を作成しました。
参考にしてください。
6 X線CTで誤っているのはどれか。
1.造影効果を高めるには管電圧を低くする。
2.短時間で撮影するにはヘリカルピッチを大きくする。
3.金属アーチファクトを抑制するには管電圧を高くする。
4.仮想的な非造影画像を作成するためにはdual energyで撮影する。
5.1回転当たりの投影データ数を増加させるにはX線管の回転速度を高める。
解 5
5.1回転当たりの投影データ数を増加させるにはX線管の回転速度を高める。
→view数と言われるやつです。管球の回転速度が上がれば、view数は低下します。
1〜4は正解なので、覚えてしまうのが良いでしょう。
3.金属アーチファクトを抑制するには管電圧を高くする。
メタルアーチファクトは、歯の治療や骨折後の治療で金属などの高吸収物体があると、透過するX線が極小となり正常に再構成できなくなります。
最近ではMAR(Metal Artifact Reduction)と言われる、メタルアーチファクトを再構成(計算)によって減らすような技術が良く見られます。
7 マルチスライスCT装置で、ビーム幅40mm、ピッチ係数<ピッチファクタ>0.8としたとき、ガントリ1回転当たりのテーブル移動距離[mm]はどれか。
1.16
2.24
3.32
4.40
5.50
解 3
公式を用います。
ビームピッチ = 1回転当たりの寝台移動距離 ÷ ビーム幅
変換して、求めます。
1回転当たりの寝台移動距離 = ビームピッチ × ビーム幅
= 0.8 × 40mm = 32mm
なおヘリカルピッチの詳細については、ヘリカルCTについてを参照してください。
9 X線CTにおいて、特定の検出器素子の感度異常によって生じるのはどれか。
1.部分体積効果
2.リングアーチファクト
3.モーションアーチファクト
4.ウィンドミルアーチファクト
5.ビームハードニングアーチファクト
解 2
CTのアーチファクトについて、詳細はCTのアーチファクトについてを参照して下さい。
- ストリークアーチファクト
1個の検出器のデータが、1つの投影角度で異常となった時に生じます。複数の投影角度で発生すると接線ストリークや不完全なリングアーチファクトとなります。
- リングアーチファクト
1本のストリーク像が、全ての投影角度で連続して発生することで生じる。
- シャワーアーチファクト
特定の方向の全ての検出器が異常データとなる場合に発生します。X線管の出力異常が原因のことが多いようです。
10 MRAについて正しいのはどれか。
1.Dixon法が用いられる。
2.PC法では脂肪組織が血管抽出の妨げとなる。
3.TOF法では流速と流れの方向が測定できる。
4.非造影MRAは造影MRAに比べ乱流の影響を受けにくい。
5.造影MRAでは目的血管に合わせて撮影タイミングが決定される。
解 5
5.造影MRAでは目的血管に合わせて撮影タイミングが決定される。
→造影MRAは、流速による信号低下がないと考えて良いです。大動脈等の検査で用いられます。より良い造影効果を得るためには、大動脈を最初に通過する時に撮像することが有用になります。
1.Dixon法が用いられる。 → DIXON法は脂肪抑制です。
2.PC法では脂肪組織が血管抽出の妨げとなる。 → PC法では静止組織と移動している組織(血管など)の位相差を画像にします。静止している組織の信号は、抑制されると覚えて良いと思います。
3.TOF法では流速と流れの方向が測定できる。→PC法では流速と流れの方向が測定できます。
4.非造影MRAは造影MRAに比べ乱流の影響を受けにくい。 → 非造影MRAは、乱流の影響を受けますので誤りであることは予想できると思います。
11 MRIのパルスシーケンスで正しいのはどれか。
1.高速SE法ではT2*効果が強調される。
2.SE法の信号はマジックアングルで最大となる。
3.GRE法でスポイラグラディエントを加えるとT2*強調像が得られる。
4.GRE法の信号強度が最大となるフリップ角をErnst<エルンスト>角という。
5.EPI法での化学シフトアーチファクトは位相方向よりも周波数方向に強くみられる。
解 4
エルンスト角
短いTRを使用するGRE法では、flip angleが90°より小さい時の方が信号が高くなります。この信号が最大となる角度をエルンスト角と言い、各組織のT1値と設定TRによって異なります。
1.高速SE法ではT2*効果が強調される。→高速SE法は、T2強調画像です。
2.SE法の信号はマジックアングルで最大となる。→マジックアングルは、アーチファクトの一種です。アーチファクトについては、こちらを参考にしてください。
3.GRE法でスポイラグラディエントを加えるとT2*強調像が得られる。→GRE法はスポイラグラディエントを加えなくてもT2*強調像の信号を取得します。
スポイラグラディエントは、残留横磁化成分を除去するか否かに関連しています。臨床に出てからで良い知識であると思います。
5.EPI法での化学シフトアーチファクトは位相方向よりも周波数方向に強くみられる→EPI法では、位相方向に出現します。このためEPI法は、脂肪抑制とセットで使用するのは基本となります。
12 MRIにおいて、ある物質のT1、T2、T2*の値の関係として正しいのはどれか。
1.T1>T2>T2*
2.T1>T2*>T2
3.T2>T1>T2*
4.T2>T2*>T1
5.T2*>T2>T1
解 1
MRIの基本というか前提条件です。概ね組織の値は、T1>T2>T2*になると思います。
参考までに。
- T1値 63%まで回復することを意味します。
- T2値 37%まで減衰することを意味します。SE法
- T2* FIDの減衰は、spin echoよりも短いです。180°パルスがないため、磁場の不均一を含みます。GRE法
18 MRI造影剤について正しいのはどれか。
1.致死的副作用はない。
2.細胞外液性造影剤はT2緩和時間を短縮しない。
3.SPIOはT2強調像もしくはT2*強調像で評価する。
4.MRCPでは消化管造影剤は陽性造影剤として用いられる。
5.Gd-EOB-DTPAは投与後15分前後から肝細胞に移行する。
解 3
5も正解で良いと思います。そう思う根拠は、過去問です。
第65回AM30 使用された造影剤を解答する問題です。
正解はEOBです。問題で使用されている画像が、造影剤投与後15分前後で肝細胞相みたくなっているからです。(胆道系からの排泄が正常であることが前提です。)

他の選択肢については、こちらを参考にしてください。
19 膝のMRI検査前の準備として適切なのはどれか。
1.患者の両手は腹部で組んだ状態とする。
2.膝用コイルのケーブルが長い場合はループ状に配置する。
3.膝以外の場所に湿布薬を貼っている場合は剥がさずに検査する。
4.両側の大腿が直接接触しそうな場合は間にクッションをはさむ。
5.条件付きMRI対応ペースメーカを植え込んでいる場合は制限なく検査を行ってもよい。
解 4
4は、ループを形成しないように対策を行っているので正解になります。
1と2 → ループを形成し、電流が流れてしまう可能性があるためNGです。
3.膝以外の場所に湿布薬を貼っている場合は剥がさずに検査する。 → 湿布薬(パップ剤)は、添付文書に含有金属の記載があるそうです。火傷のリスクになるため、剥がすことが望ましいと思います。
5.条件付きMRI対応ペースメーカを植え込んでいる場合は制限なく検査を行ってもよい。→条件付きMRI対応ペースメーカを行う際は、制限がかなりあると思います。施設毎の安全管理対策やマニュアル等が重要になると思われます。
20 3TMRI装置における脂肪と水の共鳴周波数差[Hz]に最も近いのはどれか。ただし、1Hの磁気回転比は42.6MHZ・T^-1とする。
1.36.5
2.49.7
3.149
4.224
5.447
解 5
水と脂肪の共鳴周波数の差[Hz] = 3,5[ppm] × 42,56[MHz/T] × 静磁場強度[T]
計算すると、静磁場強度が1,5[T]では220[MHz]、3[T]では447[MHz]となります。
詳細については、ケミカルシフトについてを参照してください。
21 SE法によってTR 400ms、TE 10ms で撮影された頭部MR像について正しいのはどれか。
1.脂肪は低信号で抽出される。
2.脳梗塞は高信号で抽出される。
3.脳脊髄液は高信号で抽出される。
4.脳下垂体後葉は高信号で抽出される。
5.灰白質は白質よりも高信号で抽出される。
解 4
まず問題文に与えられたパラメータの画像を推測する必要があります。与えられたパラメータで撮像するのは、T1強調画像です。
TR | TE | |
T1W | short(<600ms程度) | short(<20ms程度) |
T2W | Long(>2000ms程度) | Long(>80ms程度) |
PDW | Long(>2000ms程度) | short(<20ms程度) |
そして下垂体後葉はT1Wで、高信号になることはよく知られています。(第69回午後23)

1.脂肪は低信号で抽出される。 → 脂肪は、T1WやT2Wで高信号になります。脂肪を低信号にしたい場合は、脂肪抑制法を使用します。
2.脳梗塞は高信号で抽出される。 → 急性期は拡散強調像で、慢性期はT2WやFLAIRで高信号になります。
3.脳脊髄液は高信号で抽出される。 → T2W
5.灰白質は白質よりも高信号で抽出される。 → T2W、FLAIR

22 拡散強調像について正しいのはどれか。2つ選べ。
1.真の拡散係数が得られる。
2.脂肪抑制法が併用される。
3.組織のT2値の影響を受ける。
4.急性期脳梗塞は低信号に抽出される。
5.撮影には一般的にSE法が用いられる。
解 2、3
拡散強調画像では、一般的にEPI法が用いられます。EPI法は、位相方向にケミカルシフトアーチファクトが出現します。このアーチファクトを抑制するために、脂肪抑制法を併用することが一般的です。
1.真の拡散係数が得られる。→ ADCは、見かけの拡散係数です。
4.急性期脳梗塞は低信号に抽出される。 → 急性期脳梗塞は、拡散強調画像で高信号、ADCmapで低信号となります。しかし拡散強調画像で高信号だから、急性期脳梗塞と決め付けるのは早いです。
それはT2 shine throughという、T2値の影響を含んだアーチファクトの可能性もあります。このT2値の影響を除外するために、ADCmapで低信号を確認することが大切となります。
拡散強調画像 | ADCmap | 拡散制限? |
高信号 | 低信号 | 急性期脳梗塞 |
高信号 | 高信号or等信号(低信号でない) | T2 shine through |
23 腰椎MRIの矢状断像で呼吸性アーチファクトを軽減する方法として正しいのはどれか。
1.TEを長くする。
2.フリップ角を大きくする。
3.位相エンコード方向を頭尾方向にする。
4.腰椎にサチュレーションパルスを付加する。
5.MT<magnetization transfer>パルスを付加する。
解 3
呼吸性アーチファクトというのは、この場合お腹の動きが画像に影響するアーチファクトを言います。
対策の一つとして、周波数と位相のエンコード方向を変えます(スワップする)。
詳細は、MRIのアーチファクトについても参考にしてください。
24 ファンクショナルMRIで正しいのはどれか。
1.造影剤を使用する。
2.データ取得にSE法を用いる。
3.脳実質の動きを画像化している。
4.データ処理に最大値投影法を用いる。
5.運動野を抽出するためには指先の運動を行う。
解 5
Functional MRIは、形態的な情報ではなく、脳機能に関する情報を画像化したものです。
例えば検査中に右手を動かしたら、左の運動野が活性化されるというのを画像に表す試みです。
これはBOLD効果をT2*で捉え、タスクと関連した部位を統計手法で求め画像化します。
BOLD効果(blood oxygenation level dependent)とは、血液の酸素化の度合いによってMR信号が変化する効果のことです。
撮影にはEPI法が用いられ、解析ソフトを用いて画像化します。