第70回 診療放射線技師 国家試験 撮影技術学の午後の解答を作成しました。
参考にしてください。
参考図書
84 診療放射線技師の対応として正しいのはどれか。
1.患者氏名の確認をCT検査終了後に行った。
2.ポータブル撮影後に患者の感染情報を入手した。
3.結核患者のX 線撮影時にサージカルマスクを着用した。
4.ヨード造影剤を患者に投与するために静脈刺を実施した。
5.易感染状態の患者を撮影する前に装置をエタノールで消毒した。
解 5
1.患者氏名を含めた本人確認は、検査前に行います。
2.患者の感染情報等は検査前に調査しておきます。
3.結核は空気によって感染しますので、N95マスクを着用します。
サージカルマスクは飛沫感染の予防にはなりますが、空気感染の予防にはなりません。
4.ヨード造影剤を患者に投与するために静脈刺を実施した。
→この試験当時は不正解でしたが、法改正が行われ診療放射線技師も静脈路の確保が出来るようになりました。よって今後は静脈路確保や抜針等の問題は出題されないと考えられます。
85 ある部位におけるデジタルX線撮影において、管電圧70 kV、管電流100 mA、照射時間0.1 s、SID 200 cmのとき、偏差指標[DI <deviation index>]が-3 であった。DI を0にする条件変更はどれか。ただし、同一の画像処理を用いるものとする。
1.管電圧を60 kVにする。
2.SID を100 cmとする。
3.管電流を200 mA にする。
4.照射時間を0.3 sにする。
5.0.5 mmAl付加フィルタを加える。
解 3
難問だと思います。
偏差指標DIは、次の式で定義されています。
DI = 10 × log(EI/EIt)
ここで、EI:Exposure Index、EIt:Target Exposure Index です。
大分要約しますと、
これらDI、EIやEItは、デジタルX線撮影においての線量の目安です。
EItは目標線量で、EIは実際の線量、DIはその線量が最適であったか否かを数値で表すための指標です。
- EI=EIt つまり DI=0の時は、最適な線量で撮影されたことになります。
- EI>EIt つまり DI>0の時は、線量過多となります。
- EI<EIt つまり DI<0の時は、線量不足となります。
logの計算が面倒なので、これだけでも覚えておくと便利だと思います。
2倍線量の時はDI=3、1/2線量の時はDI=-3となります。
この問題では、DI=-3であることから、1/2線量であることが分かります。
DI=0にするためには、線量が設問の2倍になる選択肢を選ぶ必要があります。
1.管電圧を60 kVにすると、透過力が低下しますので線量は今よりも減ります。
2.SID を100 cmとすると、距離の逆2乗であるから線量は4倍になります。
3.管電流を200 mA にすると、線量は2倍になります。
4.照射時間を0.3 sにすると、線量は3倍になります。
5.0.5 mmAl付加フィルタを加えると、線量は今よりも減ります。
86 頭部X 線撮影で顎関節が側面像として描出されるのはどれか。
1.Rhese<レーゼ>法
2.Towne<タウン>法
3.Schuller<シュラー>法
4.Waters<ウォータース>法
5.Stenvers<ステンバース>法
解 3
シュラー法は、顎関節を観察する目的で撮影されます。
開口位、閉口位で撮影することもあります。また顎関節脱臼の時も撮影することがあります。
87 乳房X 線写真を示す。この方向の撮影で正しいのはどれか。
1.B領域は上方に描出される。
2.乳房外側上方が欠損しやすい。
3.圧迫板は乳房外側に配置する。
4.胸筋が入りすぎると乳房圧迫が不十分になりやすい。
5.乳房支持台の角度は大胸筋外側と垂直になるようにする。

解 4
MLO撮影の画像になります。
1.MLO撮影では、下方にB、D領域が描出されます。

2.MLOでは乳房支持台を、乳房の外側に合わせ撮影します。そのため外側重視の撮影となりますので、欠損しやすいのは乳房内側の上下部となります。
3.乳房支持台を外側に、圧迫板は内側になります。
5.大胸筋外側に沿ってが正解となります。
マンモグラフィについては、こちらも参考にしてください。
88 急性腹症患者の左側臥位腹部正面撮影で正しいのはどれか。
1.腹水貯留の診断に用いる。
2.尿管結石の診断に用いる。
3.消化管孔の診断に用いる。
4.発泡剤を飲ませてから撮影する。
5.ポジショニング後は素早く撮影する。
解 3
腹部のデクビタス撮影は、ガス像(空気)を観察することがメインとなります。そのガス像は、腹腔内遊離ガス像とニボー像になります。
ニボー像を観察したい時は、左下や右下などの向きはあまり関係ありません。
しかし腹腔内遊離ガスを観察したい時は、向きに注意する必要があります。結論から言いますと、左側を下、右側を上の側臥位で撮影するのが一般的です。
遊離ガスがある場合、
- 側臥位(左が下、右が上)
肝臓側に空気が抽出されるため、遊離ガスの検出に適しています。 側臥位(左が上、右が下)胃側に空気が抽出されるため、胃のガスか遊離ガスなのかの鑑別が困難です。
ただ実際の現場では、消化管穿孔を疑う時は、CT撮影することの方が一般的であると思います。
89 胃部X線造影検査で正しいのはどれか。
1.窒素で胃を膨らませる。
2.二重造影では胃小区を描出する。
3.硫酸バリウムの使用量は500 mL程度である。
4.半立位第2斜位撮影では幽門部を描出できる。
5.Brown<ブラウン>法による前処置を実施する。
解 2
1.炭酸ガスを発生する、顆粒状の発泡剤を使用します。
3.硫酸バリウムの使用量は、100~150ml程度です。
4.半立位第2斜位撮影では、噴門部や穹窿部の観察に適している体位です。幽門部を観察したい時は、第1斜位系です。
5.Brown<ブラウン>法による前処置は、大腸の注腸検査で良く行われます。胃の検査の場合、当日の朝食を抜くことが前処置となります。
90 頸椎のX 線写真を示す。誤っている組合せはどれか。
1.ア下顎骨
2.イ軸椎
3.ウ乳頭突起
4.エ環椎
5.オ後頭骨

解 3
ウは、第2頚椎の歯突起になります。
通常の頚椎正面撮影は、C3-7が観察できるように撮影します。上部頚椎を観察したい時は、このように開口位で撮影します。
91 頭部の造影CT像で増強効果を認める正常構造はどれか。
1.脳梁
2.被殻
3.前頭洞
4.淡蒼球
5.脈絡叢
解 5
脳血液関門(BBB)が存在する部位は、造影効果は見られません。
病気などでこのBBBが破綻すると、造影効果が見られることになります。
ただし、下垂体、脈絡叢、松果体は、BBBが存在しないため、造影効果が見られます。
BBBについては、こちらを参照にしてください。
92 右足のX 線写真を示す。矢印で示すのはどれか。
1.距骨
2.踵骨
3.舟状骨
4.立方骨
5.第楔状骨

解 3
足部の画像解剖は比較的良く出題されています。画像を参照してください。

93 腹部造影CT像を示す。正しい組合せはどれか。
1.ア胆囊
2.イ膵臓
3.ウ横行結腸
4.エ脾臓
5.オ副腎

解 4
腹部の画像解剖は良く出題されています。画像を参照してください。
