第70回 診療放射線技師 国家試験 撮影技術学の解説を作成しました。
参考にしてください。
参考図書
83 X線撮影中に患者が急に意識を消失した。患者からの反応がないことを確認した後、一次救命処置としてまず行うべきなのはどれか。
1.保温
2.応援要請
3.胸骨圧迫
4.血圧測定
5.AED装着
解 2
救急領域では、一次救命処置をBLS(Basic Life Support)、二次救命処置をACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)と言います。
倒れいている人を発見した場合は、呼びかけに応答があるか、呼吸はしているか、脈拍を触知できるかを確認します。このような状況で、反応がないもしくは心肺停止している場合は、まず応援を呼びます。
救急車を呼ぶ、AEDを持ってくる、心肺蘇生を行うなどの役割を一人でこなすと、大きなタイムロスとなってしまいます。
84 X線撮影におけるエアギャップ法で正しいのはどれか。
1.像が拡大する。
2.グリッドを使用する。
3.画像コントラストは低下する。
4.被写体と検出器を密着させて撮影する。
5.被写体で発生する散乱線量が増加する。
解 1
エアギャップ法とは、被写体と受像器の距離をとる手法を言います。マンモグラフィの拡大撮影等にも用いられている手法で、次のような特徴があります。
- 受像器に到達する散乱線が減少します。よってコントラストは良くなります。
- 受像器に到達する必要な線量も減少してしまうため、線量をあげる必要があります。よって被ばく線量は大きくなってしまいます。
- 像が拡大してしまいます。よって分解能は低下します。
85 X線撮影の体位を示す。観察部位で正しいのはどれか。
1.小転子
2.大転子
3.顆間窩
4.鉤状突起
5.膝蓋大腿関節

解 3
この撮影は、膝顆間窩を観察する目的で撮影されます。
撮影法が分からなくても、膝を撮影していることは予想がつくと思います。なので次のように、消去法でも解答できるのではないかと思います。
- 小転子・大転子は、大腿骨近位側の部位です。
- 鉤状突起は、肘関節(尺骨の部位)です。
- 膝蓋大腿関節は、スカイラインで撮影します。
86 胸部X線撮影で高圧撮影を行う理由はどれか。
1.心臓陰影の拡大を抑制する。
2.散乱線の発生量を減少させる。
3.画像コントラストを向上させる。
4.生殖腺の被ばく線量を軽減させる。
5.骨と重なった病巣部を観察しやすくする。
解 5
胸部X線撮影の特徴は、次のとおりです。
- 立位正面撮影では、PA(背腹)方向で前胸部をフィルム面に密着させます。心臓を受像器に近づけることで、心陰影の拡大を極力抑えています。
- 最大吸気にて撮影します。肺野の観察できる領域を広くするため、再現性を良くするため、吸気不足だと心臓のうつり方にも影響します。
- X線画像は肺野が観察できること、そして心臓や椎体と重なった縦隔も観察できる方が良いです。そのため、高管電圧(管電圧120~140kV)で撮影します。肺野の黒い部分、縦隔の白い部分を、1画像で表現するため、ラチチュードを広くするため、コントラストは低下します。
- 胸部撮影では短時間撮影を行います。それは心拍動や体動によるボケを少なくするためです。
- 長距離(180㎝以上)で撮影します。→心臓陰影の拡大を抑制するため、照射されるX線束は可能な限り水平が良いためです。
87 非イオン性水溶性ヨード造影剤で正しいのはどれか。
1.検査前にヨードテストを実施する。
2.アナフィラキシーは用量依存性に発生する。
3.投与した患者の10〜15%に副作用が発生する。
4.重篤な甲状腺疾患のある患者への投与は禁忌である。
5.モノマー型製剤の分子量はダイマー型製剤よりも大きい。
解 4
1.検査前にヨードテストを実施する。一昔前は、造影剤本体とは別にテストアンプルが添付されていたそうです。そのアンプルを使用して、テスト実施を行っていたそうです。
しかし以下の理由により、2000年にはテストアンプルの添付が中止され、添付文書からも予備テスト実施に関する記載は削除されたそうです。
- 造影剤本体と異なるロットのテストアンプルが使用される場合がある
- そもそもテストによる予知能がないこと
- ヨードテストでも重篤な副作用が生じる可能性があるにもかかわらず救急体制の整っていない状況下でヨードテストが行われることが多いこと
2.アナフィラキシーは用量依存性に発生する。アナフィラキシー様の反応は、非用量依存性に発生します。
3.投与した患者の10〜15%に副作用が発生する。 色々な文献を参考にしますと、副作用の発生率は3%程度と思われます。 その中で呼吸困難、血圧低下、心停止、意識消失などの重篤な副作用の発生率は、0,1%未満と思われます。
5.モノマー型製剤の分子量はダイマー型製剤よりも大きい。
- モノマー型は、ベンゼン環1つの構造であり、1分子当たり3個のヨードを有しています。
- ダイマー型は、モノマー型が2個連結しています。1分子当たりのヨード数が、6個とモノマー型の2倍となります。
ヨード造影剤については、こちらも参考にしてください。
88 X 線CT で正しいのはどれか。
1.頸部の撮影では両手を挙上させる。
2.骨盤部の撮影の基準点は剣状突起である。
3.CT コロノグラフィは骨盤高位で撮影する。
4.部分体積効果の低減にはスライス厚を薄くするのが効果的である。
5.造影検査を行う場合には検査前24時間程度の絶飲食を必要とする。
解 4
1.頸部撮影で両上肢を挙上すると、ビームハードニングの原因となります
2.腸骨陵や恥骨結合を基準点とするのが一般的であると思います。剣状突起は、腹部撮影時の基準点とすることが一般的です。ただし使用するメーカーによって、基準点の決め方が異なります。
3.CTコロノグラフィは、肛門からカテーテルを挿入し大腸内に炭酸ガスを注入します。
体位変換をしながら、炭酸ガスを逆行性に送ります。スカウト像を撮影し、大腸の拡張が十分であれば、背臥位にて撮影します。その後、腹臥位で撮影します。この時腹部が圧迫され過ぎないように、腹部のマットを除去して撮影しています。よって骨盤高位ではないと思われます。
5.造影検査だからといって、24時間の絶飲食は必要ありません。一般的に副作用を低減させるためには、むしろ水分を補給したり、不安の除去を行ったりします。前投薬を用いることもあります。
また腹部領域では食事をすると、胆嚢が収縮してしまう、腸間の蠕動がアーチファクトの原因になることもあります。ですから当院では、腹部領域では食後2~3時間空けて、腹部造影CTを行うようにしています。
89 骨塩定量検査法と測定部位の組合せで正しいのはどれか。
1.定量的CT<QCT>法 頸椎
2.定量的超音波<QUS>法 前腕骨
3.X 線写真濃度測定<RA>法 中足骨
4.単一エネルギーX線吸収測定<SXA>法 腰椎
5.二重エネルギーX線吸収測定<DXA>法 大腿骨
90 腹部の血管造影写真を示す。矢印で示すのはどれか。
1.門脈
2.総肝動脈
3.固有肝動脈
4.上腸間膜動脈
5.下腸間膜動脈

解 1
この画像は上腸間膜動脈(SMA)にカテーテル先端を留置し、造影剤を注入し、少し時間をおいて撮影された画像です。
造影剤が、SMA → 小腸や一部の結腸 → 門脈に到達したタイミングで撮影されています。
現場でも、腹部の血管造影は良く行われています。特にこの画像は、TACEを行う際にも見られる画像です。
まず前提として、次のようなことがあります。
- 正常な肝臓 → 門脈から栄養を受けています。
- 肝細胞癌 → 肝動脈から栄養を受けています。
TACEは、肝細胞癌へ栄養している肝動脈を塞栓して、薬剤も流す手技です。
- 正常な肝臓 → 門脈から栄養を受けています。
肝細胞癌 → 肝動脈から栄養を受けています。
ここまでは良く聞く話だと思います。
しかしTACEを行う前には門脈の撮影を行います。肝細胞癌は門脈に浸潤しやすいという特徴があります。門脈本幹など大きな門脈枝に腫瘍塞栓をつくることがあります。
門脈が塞栓されてしまうと、次のように血流が変化します。
- 正常な肝臓 →
門脈ではなく肝動脈から栄養を受けるようになります。 - 肝細胞癌 → 肝動脈から栄養を受けています。
この状態でTACEを行う、肝動脈を閉塞してしまうと、正常な肝臓もダメージを受けてしまいます。
よって門脈塞栓がある場合は、TACEが禁忌となります。
また類似問題が、第63回 午前43に出題されています。こちらでは造影した血管を解答する問題でした。
91 頭部X線写真を示す。矢印で示すのはどれか。
1.篩骨
2.下顎骨
3.頰骨弓
4.蝶形骨
5.乳突蜂巣

解 3
この画像は、頬骨弓の軸位撮影と言われる撮影法です。矢印部分の頬骨弓を観察する目的です。
最近では、CTで評価するのが一般的であると思われます。
92 頭部CT 像を別に示す。描出されていないのはどれか。
1.視床
2.内包
3.尾状核
4.第四脳室
5.シルビウス裂

解 4
図を参照ください。

