第70回 診療放射線技師 国家試験 医学大要の解説を作成しました。
参考にしてください。
Contents
50 正常の血液のpH に最も近いのはどれか。
1.6.8
2.7.0
3.7.2
4.7.4
5.7.6
解 4
動脈血のpH(生体のpH)は、7.40±0.05に保たれています。
pHがこの範囲を超えると、異常となります。
血液は代謝によって酸が多く産生されるため、常に酸性になりやすい状態です。
体内には、この酸を排泄するシステムがあり、血中pHを一定に保っています。
この酸を排泄するシステムは、肺と腎臓が大きな役割を果たします。
- pH<7.35 pHが酸性よりになり、アシドーシスと言います。
- 7.45<pH pHがアルカリ性よりになり、アルカローシスと言います。
51 細胞性免疫と最も関連が深いのはどれか。
1.抗体
2.補体
3.B細胞
4.移植免疫
5.形質細胞
解 4
移植免疫は、移植の際に認められる拒絶反応のことを言うそうです。
細胞性免疫を中心とする免疫反応であり、初回の移植で発生する移植免疫の機序はIV型アレルギーと同様だそうです。
52 呼吸運動に寄与する筋肉はどれか。2つ選べ。
1.三角筋
2.肋間筋
3.内閉鎖筋
4.胸鎖乳突筋
5.内側翼突筋
解 2、4
横隔膜をはじめ、外肋間筋、内肋間筋などを総称して呼吸筋と言います。
呼吸をする時は、呼吸筋を動かし、胸郭の体積を変化させて、間接的に肺を進展・収縮させています。
横隔膜、外肋間筋は吸気時に働き、内肋間筋は呼気時に働きます。
換気量が増大したときは補助呼吸筋(斜角筋、胸鎖乳突筋、腹壁筋など)も働きます。
咀嚼筋は、咬筋、側頭筋、外側翼突筋、内側翼突筋の4つの筋で構成されています。
これらの筋が連携することで、下顎骨を挙上したり、前後に動かすことで咀嚼を可能にしています。
眼球運動に関連する筋を総称して、外眼筋と言います。
外眼筋は次の筋で構成されています。
上直筋、下直筋、内直筋、外直筋、上斜筋、下斜筋
53 気管支樹のD – CT像を示す。矢印で示すのはどれか。
1.主気管支
2.上区気管支
3.底幹気管支
4.舌区気管支
5.中間気管支幹

解 4
区域気管支の問題です。私は学生たちに、ここまで覚えなくても良いのではないかと指導しています。しかしここで出題されてしまいましたので、申し訳ありませんという気持ちです。
ただ区域を一つずつ覚えるのは大変だと思います。


なのでこの問題で何が問いたいか、私なりに考えてみました。
まず右肺は3葉(上、中、下)、左肺は2葉(上、下)は覚えているでしょう。右肺の中葉に当たる部分は、左肺では上葉に含まれ舌区と呼ばれます。
矢印の気管は、左主気管支→上葉気管支となっていることがわかります。そして右肺でいうと、中葉と同等の場所になります。
よって、舌区気管支であることが解答できるのではないでしょうか。

54 後腹膜臓器はどれか。2つ選べ。
1.膵臓
2.胆囊
3.脾臓
4.副腎
5.卵巣
解 1、4
腹腔内臓器、後腹膜臓器は、良く出題されている問題です。
- 腹腔内臓器 肝臓、胆嚢、脾臓、子宮、卵巣など
- 後腹膜臓器 膵臓、十二指腸、上行結腸、下行結腸、直腸、腎臓、副腎、尿管など
55 平衡感覚を司るのはどれか。
1.延髄
2.小脳
3.後頭葉
4.側頭葉
5.頭頂葉
解 2
小脳には次のような役割があります。
- 四肢・体幹の動きの調節
- 平衡・眼球運動の調節
56 カルシウム代謝に関わるホルモンを分泌するのはどれか。2つ選べ。
1.腎臓
2.膵臓
3.副腎
4.甲状腺
5.副甲状腺
解 4、5
カルシウム代謝に関わるホルモンは、次の通りです。
- 副甲状腺から分泌される副甲状腺ホルモン
- 甲状腺の傍濾胞細胞から分泌されるカルシトニン
57 蚊による媒介が主要な感染経路でないのはどれか。
1.風疹
2.ジカ熱
3.デング熱
4.日本脳炎
5.マラリア
解 1
風疹は、ウイルス感染です。主な感染経路は、咳やくしゃみに含まれるウイルスを吸い込むことによる「飛沫感染」です。
また、ウイルスが付着した手で口や鼻に触れることによる「接触感染」もあります。
蚊についてはあまり記載していませんが、感染経路等についてはこちらも参考にしてください。
58 高血圧症の原因になるのはどれか。
1.肝硬変
2.脳動脈瘤
3.腎動脈狭窄
4.慢性骨髄性白血病
5.副甲状腺機能亢進症
解 3
高血圧は、脳卒中や循環器疾患のリスクとなります。
高血圧は、本態性高血圧と二次性高血圧の2つに分類されます。
本態性高血圧は、原因不明の高血圧で9割以上がこちらになります。
二次性高血圧は、原因疾患があり、その疾患の症候としての高血圧になることです。
二次性高血圧には、腎性、内分泌性、血管性のものがあります。この問題では、腎性の腎動脈狭窄が解答となります。
高血圧については、こちらも参考にしてください。
59 変形性膝関節症の発症過程において最初に生じるのはどれか。
1.骨棘形成
2.滑膜増殖
3.関節液貯留
4.関節軟骨変性
5.後十字靱帯変性
解 4
変形性関節症(OA:osteoarthritis)の問題です。
現場でも良く遭遇する疾患です。股関節、膝関節、頚椎や腰椎で良く観察されます。
このOAは、次のような順番で進行していきます。
- 関節軟骨の変性・減少
- 骨の増殖性変化・骨棘形成 or 周囲組織の炎症(二次性滑膜炎)
- 関節の変形・拘縮
60 男性よりも女性に尿路感染症が多い原因はどれか。2つ選べ。
1.尿道が短い。
2.精液が通過しない。
3.知覚神経が過敏である。
4.尿道括約筋が発達している。
5.外尿道口と肛門の距離が短い
解 1、5
尿路感染症は、解剖学的構造が原因となり、一般的に女性に多いです。
- 女性の尿道は、男性と比べて短い
- 女性の外尿道口は、膣口や肛門と近い
尿路感染症(急性期)には、次のようなものがあります。どちらも尿道から上行感染し、発症します。原因となる菌は、大腸菌が最も多いです。
- 膀胱炎 膀胱に生じた細菌感染症のことです。排尿痛、頻尿などの膀胱症状が主体です。
- 腎盂腎炎 腎実質、腎盂・腎杯に生じた細菌感染症のことです。発熱などの全身症状が見られます。
61 ウイルス感染と発症の関連が深いのはどれか。
1.子宮外妊娠
2.子宮筋腫
3.子宮頸癌
4.子宮体癌
5.子宮内膜症
解 3
- 子宮頚癌は、ヒトパピローマウイルスの感染が原因となります。
- 子宮体癌は、エストロゲン、エストロゲンに対抗するホルモンが原因です。
- 子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症は、エストロゲン依存性疾患です。
子宮関連の疾患については、こちらも参考にしてください。
62 膠原病でないのはどれか。
1.痛風
2.皮膚筋炎
3.関節リウマチ
4.全身性強皮症
5.全身性エリテマトーデス
解 1
膠原病の概要は、次のとおりです。
- 何らかの自己免疫反応が働く
- 全身に分布している結合組織を中心に炎症が起こる
- 多臓器に障害があらわれる
関節炎では、関節リウマチ、強直性脊椎炎などがあります。
血管炎では、結節性多発動脈炎、アレルギー性肉芽腫性血管炎、川崎病、ベーチェット病などがあります。
その他には、全身エリテマトーデス、全身性強皮症、多発性筋炎、 シェーグレン症候群などが挙げられます。
63 市町村で行われるがん検診の対象に含まれないのはどれか。
1.胃がん
2.乳がん
3.肺がん
4.膵臓がん
5.大腸がん
解 4
64 ヒト免疫不全ウイルス.HIV.感染者の排出物でウイルスを含む量が多いのはどれか。
1.汗
2.尿
3.精液
4.唾液
5.糞便
解 3
HIVウイルスの感染経路は、性感染、血液感染、母子感染が主となります。
どの経路でもHIV感染者の多量のウイルスを含む液体(血液、精液、膣分泌液、母乳)が、粘膜や皮膚の傷口から血中に侵入することで感染します。
※汗、尿、唾液では感染しません。