第69回 診療放射線技師 国家試験の解説を作成しました。撮影技術学(午前)、参考にして頂ければと思います。
参考図書
Contents
83 IVRにおける診療放射線技師の対応として正しいのはどれか。
1.腹腔動脈を自由呼吸下で撮影した。
2.清潔野に素手で触れた器具を置いた。
3.術者の被ばく線量を面積線量計で評価した。
4.含鉛アクリル板をできる限りX 線管に近づけて設置した。
5.ヨード造影剤を投与前に36 ℃程度まで加温して使用した。
解 5
1.呼吸の影響で画像がぶれてしまいます。
2.患者さんへの感染リスクを最小限にするために、スタッフの手や頭髪に付着している菌、使用器具類の滅菌などの対策が求められます。
3.面積線量計は、機器などに設置し、照射野×面積で被ばく線量を計算します。患者さんの被ばく管理には有効と思われます。
術者の被ばくは直接線ではなく散乱線が原因となります。そのためプロテクタ内側の胸部(腹部)や頚部などに複数の線量計を装着することが推奨されています。
4.現在では、散乱線による影響を少なくするために、管球が下にある装置がほとんどであると思われます。問題の意図がよく分かりませんが、管球が上にある場合を考えると、散乱線の発生が増大することが予想されます。
5.ヨード造影剤を使用する際は、体温程度に加温するという旨が、添付書等にも記載されています。加温することで、造影剤の粘稠度を下げることが出来ます。
84 X線撮影用グリッドの使用で正しいのはどれか。
1.被ばく線量が低下する。
2.乳房拡大撮影で使用する。
3.検出器に入る散乱線が増加する。
4.画像のコントラストが向上する。
5.管電流の大きさに応じてグリッド比を変える。
解 4
1.グリッドを使用すると、散乱線と共に必要となる直接X線も除去されてしまう可能性があります。そのため、グリッドを使用しない時よりも線量を増やす必要があります。
2.乳房拡大撮影でグリッドは使用しません。乳房拡大撮影ではエアーギャップ法を用いるため、検出器に到達する散乱線が減少します。
3.検出器に入る散乱線は減少します。そのため画質やコントラストが改善します。
5.管電流ではなく、撮影方法や被写体厚などで決まります。
散乱線除去用グリッドについては、こちらも参考にしてください。
85 側臥位胸部正面X線撮影が診断に最も有用なのはどれか。
1.胸水 2.胸骨骨折 3.鎖骨骨折 4.消化管穿孔 5.気管支異物
解 1
胸部の側臥位撮影は、
胸水を観察したい時は、観察したい方を下にします。重力で水は下に貯留します。
空気を観察したい時は、観察したい方を上にします。気胸などが観察することができることもあります。
腹部の側臥位撮影は、ニボー像や消化管穿孔を診断したい時に行われることがあります。
消化管穿孔を観察したい時は、左側を下、右側を上にします。左側には空気を含む胃があります。胃の中の空気と、消化管穿孔を区別するためです。
ただし、現在では疑わしい時は単純X線で側面像を撮影するよりも、CT撮影をする方が現実的であると思います。
86 アキレス腱のX線撮影で正しいのはどれか。
1.拡大撮影を行う。
2.自重による負荷をかける。
3.肥厚の観察を目的とする。
4.水溶性ヨード造影剤を使用する。
5.120 kV程度の高管電圧で撮影する。
解 3
私の施設でもアキレス腱撮影を行うことがあります。
拡大撮影は行いません。足関節側面像で十分と思われます。管電圧を含めた撮影条件も、足関節側面像で十分観察可能です。
施設により異なりますが、管電圧は40~50kV程度と思われます。フィルム撮影ですとそうではないかもしれませんが、現代ではほぼIPやフラットパネルが使用されていると思います。
また、基本的にアキレス腱は、単純X線では見えません。ではなぜ撮影するのでしょうか?
- 整形外科からの依頼で疼痛やアキレス腱断裂がある時
アキレス腱付着症やアキレス腱骨化症などを診断するためで、異常石灰化、踵骨の骨棘などの有無を確認します。
- 糖尿病内科や循環器からの依頼で
家族性高コレステロール血症(Familial Hypercholesterolemia: FH)と呼ばれる疾患があります。これは、low density lipoprotein (LDL)受容体関連遺伝子と呼ばれるものが変異する遺伝性疾患らしいです。
このFHは、高LDLコレステロール血症、皮膚ならびに腱黄色腫、および早発性冠動脈硬化症を主徴とします。この中の腱黄色腫は、アキレス腱肥厚が良く観察できます。
よってレントゲンでアキレス腱が9~10mm以上であれば、アキレス腱肥厚と診断されます。
87 X線CTの部分体積効果で正しいのはどれか。
1.臓器の辺縁が不明瞭になる。
2.微小な構造物の描出に役立つ。
3.管電流を大きくすることで低減する。
4.スライス厚を厚くすることで低減する。
5.リング状アーチファクトの原因になる。
解 1
CTの画像でアーチファクトが観察されることがあります。このアーチファクトは、本来存在しないものが画像になってしまう、もしくは存在するものが見えないことを言います。
そのアーチファクトの中に、パーシャルボリューム効果(部分体積効果)というものがあります。この影響により、CT値が不正確になり、組織の辺縁が不明瞭になることがあります。
CT画像で表示される濃度は、各voxel(pixel×スライス厚)の平均値となります。あるvoxel内に複数のCT値が存在する場合は、そのCT値の含まれる割合で決定します。
図を参照すると、分かりやすいと思います。

対策として、スライス厚を薄くし、空間分解能を向上させることで解決できます。ただしノイズが増加してしまいます。
パーシャルボリュームについてはほぼここに記載してますが、他のCTのアーチファクトについてはこちらも参考にしてください。
88 肝臓の造影CTで正しいのはどれか。
1.検査前の食事制限は必要ない。
2.一度の息止めで多時相を撮影する。
3.消化管造影の直後に行っても問題ない。
4.造影剤を30〜60分程度かけて点滴する。
5.検査前に推算糸球体濾過量<eGFR>を確認する。
解 5
1.食後の検査だと、胆嚢が収縮してしまいます。検査のために絶食の必要性はないと思いますが、食後数時間空けて検査することが望ましいと思います。時に造影剤で気分不快で嘔吐してしまう患者さんもいますので、胃内にも残渣は少ないほうが好ましいと思います。
2.肝臓の造影CTは、ダイナミック撮影することが多いと思います。動脈相、門脈相、遅延相を撮影します。遅延相は造影剤注入後、3分程度です。この間、呼吸を止め続けるのは現実的ではありません。
3.消化管造影を行った後は、バリウムなどの高吸収物体が腸間内に残ります。アーチファクトの原因になるので、好ましくありません。
4.肝臓の造影CTは、ダイナミック撮影することがほとんどです。インジェクタを使用して、造影剤を急速注入します。
5.ヨード造影剤は、身体には異物となります。造影検査後は速やかに尿中に排泄することが望ましいです。しかし腎機能が低下した患者さんは、ヨード造影剤による急性腎不全や造影剤腎症を起こすリスクが高いと言われています。そのためにヨード造影剤を使用する造影検査前には、腎機能を確認する必要があります。
ヨード造影剤については、こちらも参考にしてください。
胆道造影CT
Drip Infusion Cholecystocholangiography(点滴静注胆嚢胆管造影法)というものがあります。
造影剤を点滴で30分程度かけ、その後時間を空けてCT撮影する検査です。造影剤は胆汁と一緒に排泄されますので、胆嚢や胆管が造影されます。
胆嚢や胆管の観察には、MRCPも有用です。私の施設ではMRCPが多く選択されますが、ペースメーカー挿入後などでMR検査できない方に行うことがあります。
89 右手X線撮影PA像の部分像を示す。舟状骨はどれか。

1.A 2.B 3.C 4.D 5.E
解 4
舟状骨は、臨床現場でも注意して観察する必要があります。
なぜなら、舟状骨も骨折をしやすいからです。
橈骨遠位端は骨折の好発部位です。その橈骨遠位端に骨折が見られなくても、舟状骨が骨折していることがあります。
90 腫瘤性病変を含む乳房のX線写真を示す。正しいのはどれか。

1.頭尾方向撮影である。
2.腫瘤濃度は高濃度である。
3.腫瘤辺縁は境界明瞭である。
4.乳房の構成は高濃度である。
5.腫瘤占拠部位はX領域である。
解 2
画像はMLO撮影です。
乳房は脂肪も含まれており、高濃度とは言えません。
腫瘤は高濃度です。境界は比較的明瞭と思われますが、乳頭側ではやや不明瞭の印象です。

マンモグラフィについては、こちらも参考にしてください。
91 骨盤部の血管造影写真を示す。正しい組合せはどれか。

1.ア総腸骨動脈 2.イ内腸骨動脈 3.ウ外腸骨動脈 4.エ浅大腿動脈 5.オ膝窩動脈
解 3
ア内腸骨動脈 イ総腸骨動脈 ウ外腸骨動脈 エ総大腿動脈 オ浅大腿動脈
膝窩動脈は浅大腿動脈の遠位にあるので、画像には写っていません。
92 骨盤部のCT像を別に示す。矢印で示すのはどれか。

1.精索 2.直腸 3.膀胱 4.前立腺 5.肛門挙筋
解 4
画像を参照してください。

この骨盤レベルの画像は良く出題されている印象で、サジタル画像を思い出すと有用です。
女性の場合、下の図の青点線を見てください。この画像をアキシャルにすると、前から膀胱・子宮(頸部)・直腸の順になります。

男性のサジタル像は見つかりませんでしたので、得意のイラストを描きました。全然分かりませんね・・・。想像力でお願いします。この問題は、膀胱が入らないで前立腺と直腸レベルの画像問題でした。
