第69回 診療放射線技師 国家試験のCT MRI関連の解説を作成しました。
参考にしてみてください。
参考図書
- オーム社,CT super basic 第1版
- 金原出版株式会社,MR・超音波・眼底 基礎知識図解ノート ※私が所有しているのは第1版ですが、最新は第2版です。
Contents
9 1回転0.5 秒の64 列のマルチスライスCT装置を用いてコリメーション幅0.625 mm、テーブル移動速度8cm/s で撮影したとき、ビームピッチとして正しいのはどれか。
1. 0.1 2. 1 3. 2 4. 64 5.128
解 2
ピッチの問題です。ヘリカルCTのピッチについては、ヘリカルCTについてにも記載していますので、参照して下さい。
テーブル移動速度8cm/sは1秒間当たりの寝台移動距離であるので、1回転当たりの移動距離に変換します。
1回転0.5 秒であるので、1秒間で2回転となります。よって1回転当たりの移動距離は4cmとなります。また単位を揃えるため40mmとして、これらを数式に代入します。
ピッチファクタ = 1回転当たりの寝台移動距離 / (検出器幅 × 使用列数)
= 40 / (0.625 × 64) = 1
10 CT値で誤っているのはどれか。
1.水のCT値は0HUである。
2.CT 値は最大1,000 HUである。
3.灰白質のCT値は白質より高い。
4.甲状腺のCT値は筋肉より高い。
5.空気のCT値は- 1,000 HUである。
解 2
CT値についての問題です。CT値については、CT値とウィンドウ機能についてにも記載していますので、参照して下さい。
CT値を求めたい対象のX線減弱係数は、0~無限となります。
この値をCT値を求める公式に代入すると、CT値は‐1000~無限となります。

しかしCT値には、上限値があり、装置のbit数と関連しています。12bitでは‐1000~3084、13bitでは‐1000~7168になります。
骨のCT値が大体1000であるということは聞いたことがあるかもしれません。
ですのでCT値の上限値が1000であると思ってしまうかもしれませんが、上限値はbit数と関連しているのです。
11 7T のMRI における水素原子核の共鳴周波数[MHz]に最も近いのはどれか。ただし、1.5Tでの水素原子核の共鳴周波数を64 MHz とする。
1. 43 2. 64 3.128 4.256 5.299
解 5
アプローチの方法は2つあると思います。
- 問題文で与えられている1,5Tで、64MHzを使用します。
1,5T→64MHz
2倍すると、3,0T 128MHz
3倍すると、4,5T 192MHz
4倍すると、6,0T 256MHz
5倍すると、7,5T 320MHz
- 1T当たりの共鳴周波数を求めて、7倍します。
64[MHz]=1,5[T]×f[MHz/T]
f[MHz/T]=64[MHz]/1,5[T]
f≒42.666667[MHz/T]
42.6[MHz/T]×7[T]=298.2[MHz]
12 5インチRFコイルの写真を別に示す。撮影に適する部位はどれか。
1.脳 2.肝臓 3.手掌 4.脊髄 5.大動脈

解 3
図のコイルは、手関節を撮像する際に使用されます。
15 MRI のSAR で正しいのはどれか。
1.被写体が大きいほど低下する。
2.フリップ角が小さい方が増加する。
3.1.5Tよりも3TのMRI装置の方が増加する。
4.同じスライス枚数のとき、TR が短いほど低下する。
5.スピンエコー法よりも高速スピンエコー法の方が低下する。
解 3
SAR(specific absorption rate、熱吸収比、[W/kg])は、単位重量あたりの熱吸収比のことを言います。
このSARは、次のような公式があります。

SARの公式
この公式では球体となっていますが、被写体の半径の2乗に比例しています。
フリップ角と静磁場強度も2乗に比例しています。
シーケンス中に、RFパルスを出力している時間の割合を、デューティーサイクル(以降Dと表記します)と言います。高速スピンエコー法は、スピンエコー法よりもパルス数が多いため、Dは高くなります。
またDは、TRに反比例します。TRを小さくすると、Dは大きくなってしまします。
SARはほぼここに記載しましたが、他のMRIの公式等についてはこちらを参考にしてください。
16 頭部MR 像を示す。正しい組合せはどれか。2つ選べ。
1.ア STIR像
2.イ FLAIR 像
3.ウ 脂肪抑制T1強調像
4.エ T2*強調像
5.オ 造影T1強調像


解 2、5
図を参照してください。

17 blood oxygenation level dependent <BOLD>法による脳のファンクショナルMRIで正しいのはどれか。2つ選べ。
1.脳組織の硬度を計測できる。
2.撮影データの統計学的解析が必要である。
3.磁化率効果を低減する撮影法が用いられる。
4.脳局所の水分子拡散を観察することができる。
5.脳局所のデオキシヘモグロビン濃度が信号強度に影響する。
解 2、5
Functional MRIは、形態的な情報ではなく、脳機能に関する情報を画像化したものです。
- BOLD効果(blood oxygenation level dependent)は、血液の酸素化の度合いによってMR信号が変化することを言います。
- 血液中の酸化ヘモグロビン(Oxy-Hb)、還元ヘモグロビン(Deoxy-Hb)の変化量を、磁化率に敏感な撮像法で画像化します。
- ちなみに、Oxy-Hb:反磁性、Deoxy-Hb:常磁性です。Deoxy-Hbの常磁性は、不均一な磁場を形成し、信号強度が低下します。
- 撮像中に何かしら運動や負荷を与えるタスクを行います。(例:指のタッピングやしりとりなど)
- そうするとタスクと関連する脳局所のdeoxy-Hbが増えますが、それ以上に血液供給量が増加することで相対的にoxy-Hb増加します。
- 相対的にdeoxy-Hb減少することで、局所の信号強度(T2*)が上昇します。
- この信号を取得するのには、磁化率に敏感な撮像法であるグラディエントエコー法EPIがよく利用されます。
- そして得た信号を画像化するには、SPM(Statistical Parametric Mapping)と呼ばれる統計手法(差分する方法や脳形態の標準化など)が用いられます。
18 頭部MR 像を示す。点線で囲んだ部分に存在するアーチファクトへの対策で正しいのはどれか。
1.位相補正を行う。
2.加算回数を減らす。
3.FOVを大きくする。
4.位相エンコード数を増やす。
5.スライス間のギャップを広げる。

解 4
図のアーチファクトは、打ち切りアーチファクトです。
信号強度に差がある場所(例:頸椎Sagの脊髄など)に、発生しやすいアーチファクトになります。
対策としては、matrix数を増加させるのが良いと思います。
MRIのアーチファクト関連については、こちらも是非合わせて読んでください。
21 右肩MRIの横断像と点線のレベルの斜位矢状断像を示す。矢印で示すのはどれか。
1.肩峰
2.関節唇
3.烏口突起
4.棘上筋腱
5.上腕二頭筋

解 3
矢印で示されている部位の信号を観察すると、上腕骨頭と同じ信号のため骨組織であることが予想されます。
そして上腕骨頭より前方に位置するのは、鎖骨や烏口突起などが解答となります。
22 頭部MR 像を示す。描出されていないのはどれか。
1.蝸牛 2.延髄 3.半規管 4.下垂体 5.側頭葉

解 4
画像は、MR cisteternographyです。

23 頸部MRI のT2強調像を示す。矢印で示すのはどれか。
1.総頸動脈 2.椎骨動脈 3.内頸動脈 4.腕頭動脈 5.鎖骨下動脈

解 2
上位頸椎レベルの水平断画像です。
シーケンスはT2強調画像で、矢印は低信号となっています。
これはflow voidで、血管であることがわかります。
そして頸椎の横突起を走行している血管は、椎骨動脈になります。
臨床では、このflow voidが確認できないときは、椎骨動脈の閉塞等を疑います。
また救急領域では上位頚椎の損傷の時には、椎骨動脈の損傷がないかを確認することも重要なことです。