第68回 診療放射線技師 国家試験 撮影技術学の午後の解説を作成しました。
参考にして下さい。
参考図書
84 X 線撮影における解剖学的説明で正しいのはどれか。
1.肋骨弓の下縁は第3腰椎の高さにある。
2.体を左右に二分する面を冠状面という。
3.乳様突起は OM ラインよりも頭側に位置する。
4.四肢を体の正中線に近づける動きを外転という。
5.第4足趾と踵骨先端を結ぶ線は足部を撮影する際の基準線となる。
解 1
2.体を左右に二分する面は、矢状面(サジタル)と言います。前後に二分するのは、冠状断(コロナル)、上下に二分するのは、水平断(アキシャル)です。
3.乳様突起は耳たぶの背側あたりに位置している突起のことです。外耳孔よりも尾側に位置しているため、 OM ラインよりも尾側となります。教科書等で位置を確認しておいて下さい。
4.四肢を体の正中線に近づける動きを内転と言います。内旋という単語もあります。内旋は正中線に向けて四肢を回転するようなイメージです。(両股関節や骨盤を撮影する時に、両側の膝蓋骨を上に向けるようなイメージです。)
5.第4足趾と踵骨先端を結ぶ線は、足関節正面を撮影する際の基準線となります。
85 血管造影検査における術者の被ばくで正しいのはどれか。2つ選べ。
1.プロテクタの内側と外側に線量計を装着する。
2.実効線量限度は1年間につき 100 mSv である。
3.甲状腺を防護するためにネックガードを装着する。
4.患者の体格が大きくなるほど術者の被ばくは減る。
5.被ばくの第1要因は X 線管からの漏洩 X 線である。
解 1、3
血管造影検査では、術者は2つ以上の線量計を装着することが推奨されています。
プロテクタの内側には、胸腹部用として装着します。実行線量限度を測定することを目的としています。
プロテクタの外側には、頭頸部用として装着します。こちらは水晶体の等価線量を測定することを目的としています。
また法令で定められている実行線量限度は次の通りです。
なお水晶体の線量限度に関しては、R3年4月1日より変更されています。(厚生労働省のHP参照が良いと思われます。)
- 100mSv/5年(年間50mSv)
- 水晶体(等価線量) 5年間につき100mSv および1年間につき50mSvを超えないようにしなければなりません。
- 皮膚 (等価線量) 500mSv/年
- 妊娠可能な女子の腹部 5mSv/3ヶ月
- 妊娠中の女子の腹部表面 2mSv (内部被ばく1mSv)
また術者の主な被ばくは、患者さんからの散乱線が主となります。患者さんの体格が大きくなると、撮影線量も上がり、散乱線も増加するので術者の被ばくは増加します。
86 立位および坐位が困難な消化管穿孔を疑う患者に対する腹部単純 X 線撮影法で正しいのはどれか。
1.背臥位腹背方向撮影
2.背臥位第1斜位撮影
3.腹臥位背腹方向撮影
4.左側臥位腹背方向撮影
5.右側臥位左右方向撮影
解 4
消化管穿孔を疑う場合は、腹腔内遊離ガスを検出する目的でX線撮影を行います。
空気を検出するには、立位・坐位・側臥位撮影が有用です。
腹腔内遊離ガスを検出する目的で撮影する側臥位撮影は、左側を下、右側を上にします。これは空気を右側腹部に検出するためです。
逆(右側が下、左側が上)にした場合、胃内部のガスと腹腔内遊離ガスの区別が困難になってしまいます。
87 濃度が 200 w/v%の硫酸バリウム懸濁液を 3,000 mL 作成するために必要な硫酸バリウム粉末の重量X[g]はどれか。
1. 30 2. 60 3. 300 4. 600 5.6,000
解 5
求めたいバリウム粉末の量をxとして、硫酸バリウムの濃度を求める公式に当てはめてみます。
バリウム濃度[w/v%]=バリウム量[g] / 出来上がり量[ml] ×100[w/v%]
200[w/v%]=x[g] / 3000[ml] ×100[w/v%]
x=6000[g]となります。
88 CT コロノグラフィで正しいのはどれか。
1.骨盤高位で撮影する。
2.油性ヨード造影剤を使用する。
3.二酸化炭素で大腸を拡張させる。
4.大腸内部の色調観察が可能である。
5.Fine network pattern を描出できる。
解 3
CTコロノグラフィの概要について記載します。
前処置
PEG法と呼ばれる手法(下部内視鏡検査と同様)で行うことが多いと思われます。
施設によると思いますが、注腸検査で行われているブラウン法ですと、解析により得られるVE画像がぎらつく、テカテカするといったことを勉強会で聞いたことがあります。
大腸内を水様便にし、そこに水溶性の造影剤(硫酸バリウムやヨード造影剤)を経口投与することがあります。この造影剤と水様便が混ざり、CT値を上昇させ、計算によって除去する手法があります。これを電子クレンジング(electronic cleansing)と言います。
検査
自動炭酸ガス送気装置などにより、二酸化炭素を持続注入して拡張します。
二酸化炭素は、肛門から挿入したカテーテルから注入します。
その二酸化炭素を逆行性に上行結腸まで送るために、注腸検査同様に体位変換してガスを送ります。そして背臥位、腹臥位の2方向の撮影をします。
画像処理
電子クレンジングなどを行い、VE(virtual endoscopy)画像を作成します。
VE画像では、大腸の凸凹などを評価することはできますが、粘膜面の評価などはできません。
ちなみにfine network patternとは、大腸粘膜の微細な模様のことです。微細な模様を観察することで、潰瘍性大腸炎、腸結核、Crohn病、虚血性腸炎などの診断が可能となったそうです。また、X線診断のみではなく、内視鏡検査や切除標本においても大腸粘膜の最小単位として共通して用いられる用語だそうです。
ブラウン法(変法) 注腸X線検査で採用される前処置法のこと。以下2つを用います。
- 検査前日の食事 検査前日の3食に、専用の低残渣食(便になりにくい)を用いる。
- 下剤 クエン酸マグネシウム等を少量の水(150~200ml程度)で溶かし、高張液の状態で服用する
89 Dose length product<DLP>の単位で正しいのはどれか。
1.mGy 2.mSv 3.mGy・cm 4.mSv・cm 5.mSv/cm
解 3
DLPは、線量とスキャン範囲の積で表します。
スキャン全体の被ばく線量のことで、CTDIの値(ミリグレイ)にスキャン範囲の長さ(センチメートル)を掛け合わせた値となります。
DLP[mGy・cm] = CTDIvol × 照射された範囲
CTDIやDLPについては、併せてこちらも参考にしてください。
90 腰椎の正面 X 線写真を示す。正しい組合せはどれか。
1.ア 肋骨 2.イ 椎弓根 3.ウ 第5腰椎 4.エ 椎間関節 5.オ 下関節突起

解 2
ア 横突起、イ 椎弓根、ウ 仙骨、エ 椎間板、オ 棘突起
91 右乳房の X 線写真を示す。正しいのはどれか。
1.MLO 撮影である。
2.脂肪性乳腺である。
3.リンパ節腫大を認める。
4.辺縁不整な腫瘤像を認める。
5.びまん性に石灰化を認める。

解 4
画像はCC方向で撮影された画像です。
乳房は全体的に高吸収のため、乳腺密度が高いことになります。
よって、脂肪性乳房ではありません。
この画像から、リンパ節腫大やびまん性の石灰化は明らかではありません。

92 脳血管の IVRを施行中に撮影した血管造影像を示す。正しいのはどれか。2つ選べ。
1.DSA 画像である。
2.脳底動脈が描出されている。
3.動脈瘤が前大脳動脈にある。
4.動脈瘤をコイル塞栓術で治療している。
5.ガイドワイヤの先端は中大脳動脈にある。

解 4、5
DSA 画像=(造影時の画像)ー(単純時の画像)
よって、DSA画像は骨陰影が除去されます。しかし問題の図では、骨陰影が明瞭のためDSA画像ではありません。
画像は左内頚動脈、左中大脳動脈、前大脳動脈が描出されています。
動脈瘤は内頚動脈にあります。

93 胸部造影 CT 像を示す。矢印で示すのはどれか。
1.肺動脈 2.大動脈弓 3.上大静脈 4.上行大動脈 5.下行大動脈

解 1
下の図を参照して下さい。
