第66回 診療放射線技師 国家試験 撮影技術学の解説を作成しました。
第66回までは、午後に20問が出題されていました。
前半、後半にわけて解説を作成しました。
ここでは前半について書いてます、参考にして下さい。
参考図書
68 X 線撮影時の診療放射線技師の行為で適切なのはどれか。
1.肩関節正面撮影時に整位を透視下で行った。
2.尿道造影検査時に造影剤を逆行性に投与した。
3.血管造影検査時に造影剤を血管内に投与した。
4.骨盤正面撮影時に卵巣防護の目的で鉛プロテクタを使用した。
5.頸椎側面撮影時に耳に付けているピアスを外すように指示した。
解 5
1.肩関節正面撮影時に整位を透視下で行った。
→脱臼時の整復は、医師が行うべきです。
2.尿道造影検査時に造影剤を逆行性に投与した。
→造影剤は投与しません。医師が行うべきです。
3.血管造影検査時に造影剤を血管内に投与した。
→造影剤は投与しません。医師が行うべきです。
4.骨盤正面撮影時に卵巣防護の目的で鉛プロテクタを使用した。
→プロテクタで骨盤腔が見えなくなってしまうことがあります。
5.頸椎側面撮影時に耳に付けているピアスを外すように指示した。
→検査では可能な限り異物は取り除いたほうが良いです。施設や担当する医師によって基準は異なると思います。
69 X 線撮影でコントラスト対雑音比〈CNR〉を向上させる方法で正しいのはどれか。ただし、他の条件は一定とする。
1.照射野を広くする。
2.管電圧を低くする。
3.撮影距離を長くする。
4.管電流を小さくする。
5.撮影時間を短くする。
解 2
「ただし、他の条件は一定とする。」が効いてきます。
1.照射野を広くする。→余分な照射野は散乱線が増加し、ノイズが増えるため、コントラストは低下します。高齢者の腰椎側面を撮影する際などには、注意すると良いと思います。
2.管電圧を低くする。→管電圧は線質に関連します。管電圧を上げると、線質が硬くなります(透過力が上がります)。適正な条件で撮影した画像から、管電圧を上げると画像は黒くなるイメージです。
一方で管電圧を下げると、線質が柔らかくなります(X線が吸収されます)。適正な条件で撮影した画像から、管電圧を下げると画像は白くなるイメージです。これが解答になっていると思われます。
3.撮影距離を長くする。→受像器に到達する放射線量が減少します。結果、ノイズが増加します。
4.管電流を小さくする。→管電流時間積(mAs)を考慮すると、放射線量が減少します。結果、ノイズが増加します。
5.撮影時間を短くする。→管電流時間積(mAs)を考慮すると、放射線量が減少します。結果、ノイズが増加します。
70 X 線撮影条件が75 kV、400 mA、0.4 s、100 cm のとき、蛍光量が90 であった。X 線撮影条件を75 kV、200 mA、0.2 s、150 cm に変更したときの蛍光量はどれか。
1.10
2.15
3.20
4.30
5.45
解 1
before | after | memo | |
管電圧[kV] | 75 | 75 | 変化なし |
管電流[mA] | 400 | 200 | 1/2倍 |
撮影時間[sec] | 0,4 | 0,2 | 1/2倍 |
撮影距離[cm] | 100 | 150 | 3/2倍 |
各パラメータの変化(before→after)を参考にします。全てのパラメータが線量が小さくなる方向に変化しています。ではどのくらい線量が減るか?
撮影距離の逆2乗となるから、4/9倍を考慮すれば出来ると思います。
よって放射線量は、1/2×1/2×4/9=1/9倍、求める蛍光量は、90×1/9=10 です。
71 体表基準と脊椎の位置との組合せで正しいのはどれか。
1.下顎角 ――――――― 第1 頸椎レベル
2.胸骨柄上縁 ――――― 第7 頸椎レベル
3.剣状突起 ―――――― 第10 胸椎レベル
4.腸骨上縁 ―――――― 第3 腰椎レベル
5.恥骨結合上縁 ―――― 第2 仙椎レベル
解 3
脊椎レベルは比較的良く出ている印象です。暗記すれば出来ると思います。
ここでは別のアプローチ法も考えてみます。それは画像で覚える手段です。

1.下顎角 → 第2頸椎レベル
2.胸骨柄上縁 → 上位胸椎レベル
4.腸骨上縁 → 第4腰椎レベル
5.恥骨結合上縁 → 尾骨レベル
できたら暗記しておきたい基準たち
- 喉頭隆起(甲状軟骨) 第4頸椎レベル
- 胸骨柄上縁(胸骨上窩) 第2~3胸椎レベル
- 胸骨角 第4~5胸椎レベル
- 胸骨剣状突起 第9~10胸椎レベル
- 肋骨弓下縁 第3腰椎レベル
- 腸骨稜 第4腰椎レベル
- 上前腸骨棘 第2仙椎レベル
- 恥骨結合上縁 尾骨レベル
72 腹部単純X 線撮影で正しいのはどれか。
1.ニボーは石灰化のサインである。
2.120 kV 程度の管電圧で撮影される。
3.吸気停止下では可検領域が広くなる。
4.立位正面撮影では横隔膜を確実に含む。
5.腹腔内遊離ガスの観察には背臥位が適している。
解 4
1.ニボーはイレウス(腸閉塞)のサインです。
2.80 kV 程度の管電圧です。胸部正面撮影が、120kV程度です。
3.吸気では、横隔膜が下がるため腹部領域の観察領域は狭くなります。
4.立位正面撮影では、腹腔内遊離ガスを観察するため、横隔膜を確実に含みます。
5.腹腔内遊離ガスの観察には、立位、坐位、デクビが適しています。
73 X 線撮影法と観察部位の組合せで正しいのはどれか。2 つ選べ。
1.マルチウス法 ―――――――― 顆間窩
2.ステンバース法 ――――――― 錐 体
3.ウォータース法 ――――――― 後頭蓋窩
4.ローゼンバーグ法 ―――――― 肩甲骨
5.ラウエンシュタイン法 ―――― 股関節
解 2、5
1.マルチウス法 ―――――――― 骨盤計測
3.ウォータース法 ――――――― 前頭洞、上顎洞、眼窩など
4.ローゼンバーグ法 ―――――― 膝関節
カタカナの撮影法は、良く出題されています。一度整理しておいた方が、良いでしょう。
まずは頭部領域です。
- タウン 頭部の後ろ側を観察するときに撮影されます。両側錐体、大後頭孔、後頭骨など。
- ウォータース 前頭骨や顔面骨を観察したい時に撮影されます。眼窩、上顎洞、前頭洞など。

- シュラー 顎関節脱臼の時に撮影することがあります。本来は開口位、閉口位で撮影します。また側頭骨を観察する時に撮影されることもあります。
- コールドウェル 副鼻腔と思われます。
- ステンバース 側頭骨や錐体など。

- レーゼ 視神経孔の観察を目的としています。
次は整形外科関連です。施設や医師によって、撮影方法が決まっていると思います。
- ストライカー 肩関節
- ウェストポイント 肩関節
- スカプラY 肩関節
- ラウエンシュタイン 股関節
- ローレンツ 小児股関節
- ローゼンバーグ 顆間窩
- スカイライン 膝蓋大腿関節
- アントンセン 距踵関節
私の職場に産科はありませんので、撮影したことありません。
- グースマン 骨盤計測、立位側面像
- マルチウス 骨盤計測
74 乳房C-C 方向撮影において正しいのはどれか。
1.乳房支持台の角度は45 度である。
2.管電圧は圧迫乳房厚に正比例する。
3.自動露出制御〈AEC〉は使用しない。
4.MLO 方向撮影より圧迫圧を弱くする。
5.外側上部はブラインドエリアになりやすい。
75 水溶性ヨード造影剤で正しいのはどれか。
1.血漿より浸透圧が低い。
2.使用前にはヨードテストを実施する。
3.経口投与では大部分が尿中から排泄される。
4.モノマー型製剤はダイマー型製剤よりも分子量が大きい。
5.非イオン性製剤はイオン性製剤よりも即時型副作用が少ない。
解 5
1.血漿より浸透圧が低い。→ヨード造影剤は、細胞外液性です。静脈内から投与された造影剤は、血管内(血漿)から細胞外液(組織間液)に移行します。血管内と組織間液の濃度が同じになったら、平衡状態になります。その後は腎臓から排泄されます。
よってヨード造影剤の浸透圧は、血漿と一緒??
2.使用前にはヨードテストを実施する。→第70回 午前87に同じ選択肢が出題されています。
3.経口投与では大部分が尿中から排泄される。→ヨード造影剤の経口投与があるか調査中です。大部分が血管内投与と思われます。
4.モノマー型製剤はダイマー型製剤よりも分子量が大きい。→ダイマー型が大きいです。
詳細は、CTのヨード造影剤についてを参照してください。
76 心臓カテーテル検査で正しいのはどれか。
1.油性造影剤を使用する。
2.左室造影像から駆出率を評価できる。
3.右冠動脈造影では回旋枝が造影される。
4.大腿動脈から挿入したカテーテルは腹腔動脈を経て心臓へ到達する。
5.左冠動脈造影ではSwan-Ganz〈スワン・ガンツ〉カテーテルを使用する。
解 2
1.油性造影剤を使用する。
→血管内に投与されるため、水に良く溶ける必要があるので、水溶性ヨード造影剤が使用されます。
2.左室造影像から駆出率を評価できる。
→心臓のポンプとしての機能を評価するため、EFと呼ばれる左室駆出率を求めます。
3.右冠動脈造影では回旋枝が造影される。
→左冠動脈は、前下行枝と回旋枝で構成されています。
4.大腿動脈から挿入したカテーテルは腹腔動脈を経て心臓へ到達する。
→ 大腿動脈→総腸骨動脈→大動脈→心臓になります。
5.左冠動脈造影ではSwan-Ganz〈スワン・ガンツ〉カテーテルを使用する。
→右心系の造影にスワン・ガンツが使用されます。肺動脈の圧などを調査するためです。
77 IVR について疾患と手技の組合せで正しいはどれか。
1.胆管癌 ――――――― ステント留置
2.肝細胞癌 ―――――― 血栓溶解術
3.骨盤骨折 ―――――― エタノール注入
4.冠動脈狭窄 ――――― リザーバー留置
5.脳動脈瘤破裂 ―――― 血管拡張術
解 1
解答から行きます。
1.胆管癌
→総胆管ステントを留置することがあります。
2.肝細胞癌 ――――――TACE
3.骨盤骨折 ――――――動脈塞栓術
4.冠動脈狭窄 ―――――ステント留置、血管拡張術
5.脳動脈瘤破裂 ――――コイリング
IVRとは、Interventional Radiologyの略です。
エックス線透視や超音波像、CTを見ながら体内に細い管(カテーテルや針)を用いる治療法のことです。
手術を必要としないため、身体にあたえる負担が少なく、病気の場所だけを正確に治療でき、入院期間も短縮できるなど優れた特徴を持っています。
そんなIVRは、血管系と非血管系に分類されます。何となく血管系のみをIVRというイメージもあると思います。
- 血管系IVR
動脈塞栓術、TACE、リザーバー留置術、静脈塞栓術、経皮的血管拡張術(PTA)、ステント留置術、ステントグラフト留置術、血栓溶解術、 血管内異物除去術、TIPS など - 非血管系IVR
生検、胆管ドレナージ、膿瘍穿刺ドレナージ、経皮的腎瘻造設術、 結石除去術、ステント留置術、胃瘻・腸瘻造設術、ラジオ波熱凝固術、経皮的椎体形成術 など